「昭和のくらし博物館」女性館長が伝える「家族の平和」
「物質的には豊かではないけれど、かつての日本には家族みんなでちゃぶ台を囲んで、暮れにはご近所と餅つきをしたり、にぎやかで活気のある暮らしがあったんです」
そう語るのは、小泉和子さん(83)。小泉さんは、東京都大田区南久が原にある「昭和のくらし博物館」の館長である。「昭和のくらし博物館」は、’51年(昭和26年)に建てられた木造住宅(登録文化財)。家具調度も家族が暮らした昭和という時代そのままに保存、四季折々の庶民の生活ぶりが公開されている。そして、もともとは小泉さんが17歳から25歳まで過ごした実家なのだ。
「昭和30年代から40年代というのが、江戸時代以降の日本の歴史のなかで、もっとも幸福な時代だったと思います。平和になり、理想に向かって進もうとした輝かしいころ」(小泉さん・以下同)
小泉さんは庶民の家具の歴史を研究する「生活史研究所」の所長でもある。83歳の現在も旺盛な執筆活動のほか、講演会やイベント、学会などで全国各地を飛び回る日々だ。
小泉さんは、’33年(昭和8年)11月19日に生まれ、現在の東京都文京区小石川で4人姉妹の長女として育った。