“被爆証言会”続けた37歳男性逝く、命燃やした4,000日
《今ある身近な幸せに気付こう》。斎場の壁に飾られた故人の言葉と、在りし日の笑顔に知人たちは涙を流した−−。
7月3日、冨恵洋次郎さんが肺がんのため亡くなった。7月5日・6日に通夜・告別式が営まれ、37歳という早すぎる逝去を悼み、約800人の人々が参加したという。広島市生まれの冨恵さんは被爆3世。地元の高校を卒業後、20歳からバーを経営してきた。被爆体験者による「証言を聞く会」を始めたのは’06年2月。バーの客から原爆について聞かれたとき答えられず、自ら原爆問題について学ぶ場を設けようと考えたことがきっかけだった。
会は広島の原爆忌(8月6日)にちなんで、毎月6日に11年間一度も欠かさず開催されている。会場は冨恵さんが経営する「バースワロウテイル」。生前の冨恵さんは、活動についてこう語っていた。
「僕自身、被爆者の話を聞いて、『また頑張ろう』と勇気づけられていたんですよ」
昨年5月末、米オバマ前大統領の広島への電撃訪問を契機に、本誌は冨恵さんの半生を取材し、「シリーズ人間『母が語らなかった原爆を僕は知りたい』」