野際陽子さん四十九日で長女語った「最期の病室と涙のハグ」
それで私、何も言えなくて。これまで『絶対治るよ!』と言いながらも、やっぱりどこか不安で仕方がなかった。精一杯明るく振舞ってきたけど、本当は『母がいなくなったら』と思うと怖くて仕方がなかった。だからもう涙が止まらなくなって。“泣いているのを気づかれてはいけない”と、顔を上げられませんでした」
振り返る真瀬の目から涙がこぼれる――。覚悟しながらも、気丈だった母。娘に心配をかけまいとする、野際さんの強さだったのかもしれない。
「母も何も言わず、しばらく抱き合っていました。
でも肺を圧迫すると苦しいじゃないですか。だから『ママ、苦しいよね。ごめんね!』と言って、顔を上げようとしたんです。そうしたら、母が離さないんです。その力が、びっくりするくらい強くて……。だから私は笑顔で『ママ、腕の力すごいよ。まだまだ力あるよ!大丈夫だよ』と言いました」
最後の数日間、野際さんは薬のためずっと眠り続けていたという。
「先生が『きっと、声は聞こえていると思います……』とおっしゃってくれたので、私は声をかけ続けていました。