映画作家・大林宣彦語る映画の魅力「何年かけても平和作れる」
に取り組んでいたときだった。『花筐』は、戦時中の佐賀・唐津を舞台に、「自分らしく生きて、自分らしく死にたい」と切実に願う若者たちを描く群像劇。
「昨年の8月のことです。映画の撮影に入る前に受けた検査結果から『骨に異常があるから、きちんと調べたほうがいい』と言われましてね。唐津の撮影現場に入って、さあ、いよいよ明日から撮影だという日に、唐津赤十字病院で念のため再検査を受けたんです。まず、異常がある骨を診てもらいと、がんが見つかった。続けて検査した大腸や胃は何も問題はなくて。最後に肺を調べてもらったら、ステージ4の肺がんだとわかった。
余命半年と診断されました。それでも、撮影は待ってくれません。初日からいきなり2日間、徹夜で撮りました。そして、改めて病院に行ったら今度はいきなり余命3カ月と宣告されて。『たった2日間で余命が3カ月も減るっていうのは大変なことだぞ』と思いましたよ。ですが、自分でも不思議なほどネガティブな気持ちはいっさいなかった。それはやはり、伝えなければいけないメッセージがあるから。命懸けで撮らなければならない映画があるからなんです。
僕には、大先輩から託された“遺言”があります」