「生業を返せ!」最大の原発訴訟、原告たちの訴え(後編)
もあるね』と言われて……。娘は今でも必ず、戻るときには線量計を持参します。安心して孫たちを里帰りさせてやれないのが、かわいそうで」
正子さんは、エリさんが孫を連れて里帰りするたびに、ミネラルウォーターと福島県産以外の食材を用意する。地元の水や食材に放射性物質が含まれていたら、と考えると心配だからだ。
「このあたりは、山や田んぼがあって自然の恵みが豊かなんです。この時期なら、山で栗とススキを取ってきて、お月見ができた。山菜を食べるのも楽しみだったし、山で汲んできた湧き水でコーヒーを入れると、すごくまろやかな味わいになって」(正子さん)
「でも、もうすべて汚染されてしまったから、そんなことはできなくなりました。国や東電は、お金だけで解決しようとするけど、それだけでは取り戻せないものもあるんです」(利夫さん)
金子夫妻はそう言って、失われた自然の豊かさを懐かしむ。
9月22日に判決が出た千葉の原発避難者訴訟では、「大津波は予見できたが、対策を講じたとしても事故を回避できなかった可能性がある」