「沢山の幸せと愛情をありがとう」20歳で逝去した女性がノートに遺した言葉
旅行に行く。映画を見る。家族そろってご飯を食べる。20歳で逝った女性が生前に望んだ、ほんのささやかな日常の出来事は、真に「かけがえのない」ものだった。かなえられた願い、かなわなかった希望、そのすべてが自分を支えてくれた母に向けての、喜びであり、かけがえのない命をともに生きてくれたことへの「感謝」の祈りだった--。
1冊の赤い表紙のノートがある。イタリアの人気文具メーカー「モレスキン」の手帳を思わせるゴムバンド付きのオシャレなノートだ。開くと、読みやすく、やわらかな文字が箇条書きに並んでいた。
このノートに、金澤里菜さんは、やりたいこと、食べたいもの、行きたい場所などを家族といっしょに書いてきた。決して遠い夢ではない。かなったことは、1つずつ二重線で消していく。8ページにわたって、ビッシリ書かれた項目のうち、《21歳のお祝いをみんなでする》の項目はそのままだった。
――4月26日、里菜さんは21歳を迎える前に旅立った。小児白血病だった。
「このノートは、里菜と100円ショップに出かけたとき、何に使うというわけでもなく、ゴムバンド付きでオシャレだからと購入したものです」