日本人息子の仏語1位をキャベツケーキでお祝い!(辻仁成「ムスコ飯」エッセイ)
食事をしていると息子がボソッと「パパ、フランス語の成績がクラスでいちばんになったんだよ」と言ったのです。あまりに嬉しすぎて「そうか、よかったな」としか言えませんでしたが、本当は泣きそうでした。実は2年前、息子は学校の先生から落第の可能性を示唆されていました。そこからの快挙ですから、こんなに嬉しいことはありません。親が日本人なので、彼は独力でそこに到達したことになります。情けないことに、私は何も教えることができませんでした。
ある日、それは日曜日のことでしたが、サロンから男の人の声が聞こえてきました。息子が誰かと話をしているのです。
驚いて飛んでいくと、スカイプ越しに、息子は友人のお父さんからフランス語を習っていたんです。人見知りで、人に気安くお願いできるような子ではありません。よっぽど切羽詰まっていたのでしょうね。私は「すまないな、お前にたいへんな思いをさせてしまって」と、しばらくの間廊下に立ち尽くしてしまいました。
どんな手を使っても成績を上げたいという彼の願いと努力が実り、ついに勝ち取ったいちばん。彼の喜びがどれほど大きかったことか。