「久保田早紀」引退から34年――被災地で歌う『異邦人』に感じた音楽の力
’79年の大ヒット曲『異邦人』のエキゾチックなイントロが響くだけで、昔にタイムスリップしてしまう人は多いに違いない。だが、歌い手は惜しげもなくスターの座を捨てた。「消えた」「あの人はいま」扱いだった34年間に、等身大そのままの幸せを歌えるようになっていた――。
久米小百合さん(59)は、かつて「久保田早紀」の芸名で、デビュー曲『異邦人』により150万枚のミリオンヒットを成し遂げながら、わずか5年で芸能界を引退。’85年に26歳で結婚。以降は本名に戻り、音楽を通じてキリストの福音を伝えるミュージック・ミッショナリー(音楽伝道師)として活動している。
久米さんは’81年に都内のプロテスタント教会で洗礼を受ける。そして、結婚8年目の’93年には神学校へも通い始め、新約聖書を原典で読みたいと、ギリシャへ留学も果たした。
聖書の中に「異邦人」という単語が何百回も出てくることも初めて知り、不思議な縁を感じた。
39歳で長男を出産してからは、日常の子供とのやりとりをメモして、オリジナルの賛美歌の曲作りに生かしたり、教会で子供の詩のチャリティ朗読会を開くなど、母となった久米さんらしい音楽伝道師としての活動を続けていた。