翌年の再手術を経て、ようやく回復が見えた’91年。今度は腰の椎間板ヘルニアを発症。
「強烈なしびれと痛みで食事もできないくらいでした。復帰を心配する以上に、寝たきりになるのかなという不安のほうが大きかったですね」
結局、24歳から28歳という選手として伸び盛りの時期を、ケガとの闘いに費やした。光と影を味わったスター。それが以降の荒木さんの強みになった。
当時、荒木さんは、どん底状態の自分を支える人と出会った。後に妻となる寿美緒さんだ。
それは、4年間のリハビリ期間中のことだった。
「プレーを離れていたその時期は、騒がれることもないので、ある意味、プロになって初めてホッとする期間でもあったんですよね」
カネボウ化粧品のCMモデルで、女優としても活躍した寿美緒さんは、野球のことはほとんど知らない女性だった。
「王さん、長嶋さんくらいしか知らなくて。僕のことも、名前は聞いたことがあるっていうくらい(笑)。それは、僕にとって、いいことでした」
荒木さんを決してファン目線で見ない寿美緒さんは、一緒にいて楽な女性だった。