くらし情報『「日本初のアイドル」明日待子さん 戦時中は兵士たちの癒しに』

「日本初のアイドル」明日待子さん 戦時中は兵士たちの癒しに

 

待子さんは、大正9年、岩手県釜石市に9人きょうだいの末っ子として生まれた。幼いころからその才能を発揮し、小学校の学芸会で義太夫をうたえば「天才だ!」と騒がれた。さらに、可憐な容姿も評判を呼び、13歳で女優を目指して上京する。そんな彼女を一目見てほれ込んだのが「ムーラン・ルージュ新宿座」の創設者・佐々木千里夫妻。「まぁ、なんてかわいい!」とすぐさま養子縁組届を出してしまったという。

菊池寛、志賀直哉、吉屋信子、横光利一らの文豪をはじめ、早稲田大学や慶應の大学生たちも彼女見たさに劇場へと通い詰めた。

しかし、人々が近代化を楽しんだ時代はそう長くは続かなかった。日本が激しい戦争に突入すると、待子さんの華やかな舞台は兵士たちの心のよりどころになっていく。


最後に踊り子が総出演するレビューでは、小柄で可憐なアイドルが登場したとたん、軍服に身を包んだ兵士たちが、声をそろえて「明日待子、バンザイ!」と叫んだ。待子さんは声援に応えて、「ご武運、ご長久をお祈りいたします」とお辞儀をする。二・二六事件が起きた年には客席で“バンザイ”を叫んだ兵士が憲兵に取り押さえられて、戦地へ送られるといった悲劇も……。

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