『わろてんか』で描かれなかった跡取り息子とブギの女王の悲恋
(提供:吉本興業)
「切ないほどの純愛、2人の人生において、それが“最初で最後の恋”でしたから」
評伝『ブギの女王・笠置シヅ子』(現代書館)の著者で、ノンフィクション作家の砂古口早苗さんが語るこの2人とは、「吉本興業」創業者・吉本せいさん(享年60)の次男、穎右さんと、昭和のスター歌手・笠置シヅ子さん(享年70)。
吉本せいの生涯をモチーフにした連続テレビ小説『わろてんか』では、主人公・北村てん(葵わかな)が、跡取り息子の隼也(成田凌)とつばき(水上京香)の結婚に反対して勘当。駆け落ちした隼也は、母を思いながらも遠く離れた地で、妻子と3人で暮らしているという設定だがーー。
「ドラマと同様に穎右さんと笠置さんの恋愛も、最初は周囲から反対されていました」(以降、砂古口さんによる解説)
昭和18年6月、笠置さんが名古屋「御園座」で先輩役者の楽屋を訪ねたとき偶然出会ったのが、その当時、早稲田の学生だった穎右さんだ。
「笠置さんは松竹楽劇団のスターでしたが戦況悪化で劇団が解散。