フードコーディネーターが明かす「料理の鉄人」の舞台裏
野菜だけでも150種類。積み上げられた段ボール箱を見て、スタッフはぼうぜんとなります」
現場勝負ゆえのトラブルも続出。なかでも中華料理の調味料、豆鼓(トウチ)を巡る一件である。
「周富徳さんが挑戦者のときでした。本番は朝9時から。豆鼓は、大豆を発酵させた黒い豆なのですが、前夜、スタッフの1人が、ネズミのふんだと思って捨ててしまったんです。そのころは入手困難な調味料で、しかも早朝。周さんは、『こんなんじゃできない』とコックコートをスタッフに投げつけて帰ろうとして」
大騒ぎになった。
なんとか近くの中華料理店で豆鼓を分けてもらえたのだが、のちに結城さんは考えた。「豆鼓の代わりに、納豆を醤油で煮て、みそを加えてオーブンに入れるとか、そういう提案もできたのでは」と。
それからは、「過酷な状況でこそ最高の一品が生まれる」という信条のもと、鉄人や挑戦者への結城さんのむちゃぶりが始まった。
「料理人たちのポテンシャルを最大限に引き出すのも、フードコーディネーターの仕事だと思ったんです」
たとえば、鉄人・陳建一さんの鮎対決のときだ。