2018年4月21日 11:00
芥川賞作家・若竹千佐子「家族に尽くす人生で幸せにはなれねぇの」
「不思議、不思議、本当に不思議……いまでも『これは夢だべか?』と思います」
昨年、デビューした64歳の新人作家・若竹千佐子さんは、そう照れたように笑った。若竹さんは昨秋、新人作家の登竜門・文藝賞を史上最年長で受賞。それを機に出版されたデビュー作『おらおらでひとりいぐも』(河出書房新社)は、年が明けると今度は、第158回芥川賞を受賞した。
小説の主人公は、子どもが独立し、夫に先立たれた74歳の“桃子さん”。「どうすっぺぇ、この先ひとりで何如にすべかぁ」と、自らの内側に響いてくる生まれ故郷の言葉たちと向き合いながら、孤独をかみしめる日々を描く。特筆するような事件は、何も起きない。若竹さんいわく「出来事としては、なんもないの、なんにも起こらないんです。ぜーんぶ頭の中だけのこと」。
主な登場人物は桃子さんひとり。それなのに、小説の中ではセリフの応酬が続く。
「何如にもかじょにもしかたながっぺぇ」
「だいじょうぶだ、おめには、おらがついでっから。