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「ターバンを被りなさい」桂由美から言われて!カツラユミインターナショナル社長 鞍野さん、ykFデザイナー飯野さんインタビュー

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「ターバンを被りなさい」桂由美から言われて!カツラユミインターナショナル社長 鞍野さん、ykFデザイナー飯野さんインタビュー


(株)ユミカツラインターナショナル代表取締役鞍野貴幸さん(左)、新ブランド・ykF(エフ)を立ち上げたデザイナー飯野恵子さん(右)

ーー2024年4月26日に逝去されたブライダルファッションデザイナー・桂由美さんが設立した「株式会社カツラユミインターナショナル」は2025年に創業60周年を迎えました。桂由美さんはどのような思いで事業を始めたのでしょうか。

「ターバンを被りなさい」桂由美から言われて!カツラユミインターナショナル社長 鞍野さん、ykFデザイナー飯野さんインタビュー


鞍野創業当時の60年前は日本に「ブライダル」という名称すらなく、そこへ初めて「ブライダル」という言葉を持ち込んだのが桂由美でした。結婚式の衣装は和装が約97%を占めていた時代に、「花嫁さんの選択肢を広げたい」という思いで、ウェディングドレス事業を展開し始めたんです。

ーー和装占有率97%の中、どのように一般の方に浸透させたんでしょう。

鞍野有名人の結婚披露宴のテレビ中継ですね。

ーーありましたね!昭和のスターの結婚披露宴、ワイドショーで放映されていました。

鞍野披露宴中継で弊社のウェディングドレスを着た有名人カップルが「ウェディングドレスはYUMI KATSURAで特別にオーダーしました」と話し、一気にお茶の間に広がった……という、今でいうところのインフルエンサーマーケティングの走りですよね。


ーーYUMI KATSURAと言えば芸能人を起用したファッションショーで知られていますが、昔から芸能の方々との深い関わりがあるんですね。

鞍野そうですね。桂自身も、“私人”にもかかわらずメディアから"公人”のような取り扱いをされていて、バラエティなどによく出ていました。

ーーアイコン的な存在感がありました。

鞍野自己プロデュースの一貫で昔からずっとターバンを巻いていましたしね。飯野さんはターバンじゃない時代を知っていますか?

飯野恵子さん(以下、飯野)私は92年入社ですが、当時から被っていました。おそらく、桂先生のお母さまが亡くなれたあとに被り始めたと思います。先生の旦那さまも「トレードマークにしたほうがいい」と言っていたそうです。
私たちデザイナーも、10年前の50周年記念ショーの時、改まって呼び出されたと思ったら「ターバンを被りなさい」と言われて、ものすごい拒否したことがありました(笑)。
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桂由美さんとの思い出を語る鞍野さん(左)と飯野さん(右)

ーーえええ!なぜ拒否したのでしょう。

飯野私たちが被り始めたら世間からの“見え方”が変わってしまうと思ったんです。先生はターバンを200個くらい持っていていました。劣化して捨ててしまうこともありましたが、最終的にはお洋服とセットになるように150個くらいを持っていました。

鞍野……気づきました、この調子で先生のことを話していたら、エピソードがありすぎて終わらない(笑)

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ーー桂さんが会社のメンバーに愛されていることが伝わりました(笑)。改めまして、桂さんから受け継いだことを教えてください。

鞍野理念や精神面ですと、もっとも尊敬していたのが、どれだけかっこ悪くても後ろ指を指されても、絶対に諦めない精神、です。
自分が達成したい目標のためならなんでもする!というくらい根性がありました。そうした創業者の魂ひとつで、ここまで突き進んで来た会社なんです。

ーーたとえば、どんなことがありましたか?

鞍野2018年に国宝である「迎賓館赤坂離宮」でコレクションをやらせていただきました。国宝という場所を“公の催事”以外で使うことは、基本的には許されないんです。以外は。でも急に「やりたい」と言い出して、結果的に「日本の伝統工芸技術を世界に発信する」という大義名分でなし得ましたが、桂は「無理だ」と言われると逆に燃えるんです。情熱を原動力にする方でした。

ーー諦めない情熱が、いまも息づいているんですね。
飯野さんはいかがですか?

飯野デザイナーの立場からお話しすると、先生から受け継いだものはものづくり全般に入り込んでいます。たとえばシルエット。女性の体の美しさを引き立て、いかにスタイルアップになるかという点や、後ろ姿も含め360度どこから見ても美しく繋がるディティールであったりとか。生前は毎週のように“桂チェック”があり、入社してすぐの頃は何度もやり直しさせられました。

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後ろの裾が長いデザインは、今も変わらないと語る飯野さん

ーーお客さまに対してはいかがですか?

鞍野「お客さま2人に同じことを言われたら、それは商品化しなさい」と言われていましたね。つまり、顧客のニーズを現場で把握して、商品に昇華させるということを、確実にやるんです。

飯野サロンでお客さまと直接話して、お客さまの一言から「私たちはいま何を望まれているのか」ということをすくい上げ、企画に反映させていく、という感じです。本人も忙しいなかサロンに出て、晩年までお客さまと接していました。


ーーお客様と接することで気づくことは、多々ありそうです。

飯野そうですね。たとえば、お客さまのほとんどは、結婚式が終わったら30年間ぐらい1度もサロンに足を踏み入れないんです。2回目にいらっしゃるのは、娘さんの結婚式のとき。……といった方々にサロンでお会いするようになって、「桂由美のファンだと言ってくださっているのに、30年間1度も来ていただいていないのはもったいない。その期間になにか提案できるものはないか」という気づきがきっかけで立ち上がったのが、新ブランド「ykF(エフ)」なんです。年齢問わず一生着ていただけるように、というブランドを目指しています。

ーーターゲットの年齢層や想定シーンは?

飯野30代から50代くらいを想定していますが60代から80代の方にも買っていただいています。
シーンはやっぱり結婚式が多いですね。あとは、人前に立つお仕事をされていて、華やかさを求めている方。なんとなくイメージしているのが、外資系で働く女性です。そういった方に、スーツは堅すぎて華やかさがない、というときに選んでいただくイメージです。今後は、お誕生日や記念日の写真撮影時などに着ていただけるような、子どもとおそろいのお出かけ着もやりたいなと思っています。「日々の暮らしを格上げし、特別な瞬間に品格を添える」ようなアイテムをご提案していきたいです。
そういった服って、着ると所作を気にするようになるんです。先日の展示会でもインフルエンサーの方に着ていただきましたが、途端に所作が優美になっていました。


ーーエレガントなデザインがそうさせるのだと思います。

飯野そうですね。「エレガント」はYUMI KATSURAの根底にずっとあるもので、グレース・ケリーやオードリー・ヘプバーンのような内側から滲み出る美しさ、というイメージが自分の中にはありますが、そんなふうに女優さんっぽい日があってもいいんじゃない?と思うんです。どんな年齢になっても、そういった自分になれる瞬間ってわくわくするじゃないですか。
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ーー普段着のファストファッションとは一線を画したテーマ性を感じます。

飯野機能性もありお値段も低価格、といった大企業と張り合うと続かなくなるので、うちは、お母さまが購入したらその年代になった娘さんまで長く着られる服、を目指しています。

ーー受け継いでいくんですね!

飯野ウェディングドレスはそういったことがあるんですよ。購入が一般的だった時代、お母さまが着たドレスを娘さんが着て、リフォームして赤ちゃん用に作り変えるんです。いまはレンタルが主流で購入がどんどん減っていくなかで、2020年の55周年記念コレクションでは、「全世代のアニバーサリーを見せたい」という考えで、赤ちゃんの誕生を祝うシーンから七五三、成人式、結婚式、企業式、結婚15年、30年、55年、とそれぞれ大切な節目のデザインを披露しました。当時、先生が超初期に作ったオリジナルのレースが保存されていたので「そのレースを使おう」と貴重なレースを取り入れ全てを「白色」で統一しました。

ーーテーマは『Brilliant White Debut』というものでした。

鞍野当時、さぁこれからショーの準備だというときにコロナ禍になってしまい、緊急事態宣言が出る1周間前にショーを決行したんですよ。1000人近く集客する予定でいたのですが、そんな状況下でも桂は「絶対にやろう」と止まりませんでした。

ーーそんななかでの開催だったんですね。

鞍野そんな55周年を経ていま、60周年はYUMI KATSURAは「ブライダルブランド」としてだけでなく「ライフクチュールブランド」に生まれ変わるべく人生で訪れるさまざまなアニバーサリーを意識して展開しています。

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ーー「ライフクチュール」とは?

鞍野私たちはオーダークチュールドレスを作ってきたブランドですが、その考え方を持って、結婚式をメインにしつつ、その後も「お客さまの人生をオーダーメイドでデザインし、幸せに導きたい」という思いを込めました。人生には節目となるハレの日がありますが、そうした日に自由度高く自分を表現でき、人との触れ合いが楽しめるものづくりをしたいと考えています。

飯野これまではウェディングドレスにだけ特化してきましたが、もっと幅を広げ、ハレの日すべてに彩りを作ろうと。1人1人の人生に寄り添い、ハレの日のすべてをお手伝いしたい、という思いがあります。「ykF(エフ)」のアイテムもそうした一環を担っています。

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ykF(エフ)の新作を紹介してくれる飯野さん、体のラインを拾わず80代でも着られるこだわりのデザイン!

ーーハレの日に普段とは違う自分でいることは、その人にとってどんな効果があると思いますか?

鞍野コロナ禍を思い返すとわかりやすいんですが、人と接することができなくなりオンラインでビジネスが回り、そんな時期を経て人と気兼ねなく会えるようになったいま、シンプルに、うれしくないですか?人と会うことって。そこには“愛”があると思っていて。どんなに技術やテクノロジーが発達しても、人が人を愛する気持ちは絶対に変わらない、普遍的なものと再認識したんですよね。
当時、ブライダル業界で「オンラインウェディング」の提案がありメディアも取り上げましたが、いまはもう誰もやっていないんですよね。やっぱり、ハッピーなときって、その場で共鳴し合う・触れ合うことが大事ということが人間に本能的に備わっていると思うんです。人にとってハレの日を意識することは、シンプルに「楽しい!」に尽きるのではないでしょうか。

ーーとてもステキなコンセプトですね。最後に、今後の展望を教えてください。

鞍野婚礼人口が減少する中で、100年続くブランドにするため、ものづくりに対するこだわりを落とし込んだアイテムを絶やさず増やし続け、顧客を広げていきたいと考えています。”一期一会”だったブライダルから、一生の節目を彩るお手伝いができ、さらに2世代、3世代とバトンを渡していけるブランドでい続けたいと思っています。

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鞍野貴幸さん
(株)ユミカツラインターナショナル代表取締役
2017年6月に(株)ユミカツラインターナショナル常務執行役員に就任。ユミカツラブランド100年構想の達成を目的に尽力を続け、2025年5月より現職に就任。

飯野恵子さん
武蔵野美術短期大学卒業。ユキトリヰインターナショナルに2年半在籍し渡仏。パリで目にしたブライダルショップに刺激を受け、日本人に似合うウェディングドレスを手掛けたいとの思いから直接桂由美へデザイン画を送り1992年入社。ユミカツラプレタクチュール部門のデザイナーとしてトレンド感のあるドレスを生み出しつつ、オートクチュール部門も兼任。2021年からはフォーマルウエアの新ブランド・ykF(エフ)を立ち上げ現在に至る。

YUMI KATSURA
https://www.yumikatsura.com/
ykF(エフ)
https://ykf-jp.com/

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(取材・文/有山千春)

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