村上春樹の世界を表す、新しい演劇表現を目指して 那須凜が挑む日英合作『品川猿の告白』
「こうやってみて」「何か違うな、じゃあこれを持ってきて」……とか、何度もトライ&エラーを繰り返してやっているんです。ワークショップの段階では演出のマシュー・レントンさんのそうしたやり方に戸惑いましたけど、今は“マシューはきっとこういうものを見たいのだろうな”ということがこの2年間で分かってきました。もちろん通訳の方がいないと通じないことはいっぱいありますが、なんとなく相手の動きを見ていると、こちらも理解して動けると言いますか。それはやっぱり“俳優にとっての共通言語は舞台上にある”という感覚が大きいからだと思います。不思議な感覚ですね。
――日本語の台詞と英語の台詞が混ざり合って物語が展開していて、表現する俳優さんも大変だと思いますが、観客のほうも適応して観ていかなければいけませんね。
はい、そこは大きな課題で、スコットランドの俳優さんたちは日本語を理解していないし、私たちも英語を聞いていてわかる部分とわからない部分があるので、稽古を重ねていくしかないなと思っています。もちろん字幕は出ますけれど、お客さんがどのように字幕とともに舞台を観ていくのかも気になります。
日本語と英語が“通じ合っている”として進んでいくことに、お客さんも最初は「あれ?」