水上恒司の“正解のない世の中”を泳ぎきる軸「貫くことと、押し通すことは違う」
という言葉を選んだ。
「いまの時代、あまり良い世の中ではないと思っているんです。でも、僕には他者に踏みにじられない、踏まれたとしても絶対に倒れない信念があります。それがあればとても生きやすくなる。同時に『貫くことと押し通すことは違う』とも考えていて、そのバランスも難しい。簡単に言葉にできるものではありません」
水上の言葉には芯がある。考えの異なる他者を尊重しつつ、自分を見失わずにいるための処世術。驚くべきスピードで変化していく時代において、あらゆる刺激に翻弄されることなく自己を確立するために、彼が重視しているのも「他者」だった。
「人の脳みそはひとつしかありません。たかが知れていますよね。だからこそ自分ではない人間の考えを知ったり、本心を聞き出そうとしたり、本を読んだりするのだと思います」
ときには嘘も必要で、本心を曝け出すにも条件と勇気が要る。私たちが生きていく世は、どんどん絶対的な正解がなくなっていく不確かなものだ。それでも、本音と本心をもとに練り上げた信念を拠りどころに、一歩ずつ進む俳優がいる。それは希望だ。
取材・文:北村有撮影:映美
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