“夢じゃなくて、現実だった” ── a flood of circleが辿り着いた日本武道館の夜
Photo by 新保勇樹
Text:森朋之Photo:新保勇樹、Viola Kam [V’z Twinkle]
『“a flood of circle 20周年記念公演LIVE AT 日本武道館”』が5月6日東京・日本武道館で開催された。初の武道館ライブが発表されたのは、昨年11月9日のフリーライブ『I’M FREE 2025 LIVE AT 新宿歌舞伎町野外音楽堂』。その後、a flood of circleは対バンツアー『20周年記念ツアー“日本武道館への道”』をはじめ、イベントやフェスにも数多く出演。全国各地で予測不能なロックンロールを生み出しながら、武道館までひた走ってきた。
そもそものきっかけは、約5年前、佐々木亮介(vo,g)が渡邊一丘(ds)と酒を酌み交わしているときに言われた「40歳過ぎまでこのままの感じでバンドを続けるのはきつい」と言われたことだったのだが、バンドに対して(だけ)は真面目な佐々木は5月6日の公演が決まってからも、なぜ日本武道館でやるのか、なぜロックンロールなのか、なぜa flood of circleなのかをひたすら模索し続けた。果たしてたどり着いた武道館で4人は、どんな姿を我々に見せてくれるのかーー。客席を埋めたオーディエンスからも、そんな期待感がハッキリと伝わってきた。
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
この日も開演前のBGMはなし。
10代のバンドキッズから親子連れまで幅広い層の観客が開演を待っていると、15時50分くらいアリーナの後方からギターケースを背負った佐々木亮介が現れ、そのまま客席を通ってステージへ。どよめきと歓声が交差するなか、ジャックをアンプに差し込んだ佐々木は「全治」「本気で生きているのなら」を弾き語りで歌う。「本気で生きてるのなら」を歌っているときに渡邊一丘、HISAYO(b)、アオキテツ(g)がステージに登場。「おはようございます。a flood of circleです」といういつもの挨拶と「伝説の夜を君と」でライブは幕を開けた。そのまま「Dancing Zombiez」「The Beautiful Monkeys」とライブアンセムを連発。「New Tribe」では、<君を連れてきたよ約束の地へ>と歌詞を変えて歌い、大歓声が生まれた。
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
Photo by 新保勇樹
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ステージにはムービーのカメラマンが何人かいて、リアルタイムの映像を背後のスクリーンに映し出す。
最初はカメラマンがジャマだなと思ったが、そのうち気にならなくなった。客席の照明を点けたまま、いつも通りに“ただ曲を演るだけ”のライブを繰り広げる4人があまりにもカッコよかったからだ。
日本武道館公演を発表して以降、佐々木はツアーの途中からリハに参加せず、いつもギリギリに来てライブをやり、セットリストにはない楽曲をぶち込むこともあった。この日も同じようだったわけだが、これだけの大舞台でリハなしは言うまでもなくめちゃくちゃリスクが高い。しかし4人はまったく臆することなく、鳴らしたい音を鳴らしまくり、極上のロックンロールをぶち上げ続けていた。
Photo by 新保勇樹
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このバンドのキャリアは決して平坦でも順調でもなかった。2009年にメジャーデビューを果たすも、1stアルバムのツアーファイナル直前にギタリストが失踪。その後、複数のサポートギタリストの助けを借りながら活動を継続したのだが、2010年にはベーシストが脱退し、HISAYOが加入。
2016年に一般公募で選ばれたアオキテツがサポートギターとして加わり、2年後の2018年に正式加入。そこからバンドの状況は徐々に上向きはじめ、デビュー15周年を迎えた2024年には10年ぶりに日比谷野外大音楽堂でワンマン公演を行い、チケットをソールドアウトさせた。これだけの経験をしてきたバンドがついに武道館に立つのだから“めちゃくちゃバンドマンの夢じゃん!”なのだが、そんなことはまったく関係なく、4人はいつも通りに“何が起きるかわからない”緊張感と解放感を同時に体現するステージを繰り広げていたのだった。
Photo by 新保勇樹
「君は飛べる!」というシャウトとともに放たれた「KILLER KILLER」でさらなる熱狂を生み出し、「会いたかったぜ、本当に」という言葉から始まった「人工衛星のブルース」ではブルージーな歌をじっくりと響かせる。「本当のことを言うと、仕事したくないだけ。お金ください」というお約束のMCから「I’M FREE」に突入すると観客のテンションは一気に頂点へと駆け上がった。
佐々木はもちろん、メンバー全員が完璧に仕上がっていたことにも強く心を打たれた。「ロックンロールバンド」ではHISAYOの強靭なベースラインがアンサンブルの軸になり、パワーとグルーヴを兼ね備えた渡邊のドラムがしっかりと全体を支える。
ギラッとした手触りとブルーズ経由のフレーズを描き出すアオキのギタープレイも素晴らしい。結成20周年を迎えたa flood of circleだが、この4人で音を出し始めたのは2016年、つまり10年前。(何度も言うが)決して真っ直ぐではなかった道をひた走り、ぶつかり合い、せめぎ合い、切磋琢磨を繰り返すなかで鍛え上げられたバンドサウンドはこの日、間違いなくキャリア最高の状態にあった。
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
Photo by 新保勇樹
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
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ライブ中盤のハイライトだった「ベストライド」には<記録を塗り替えるんだ今日こそ><俺のベストはいつも今なんだよ>という歌詞があるが、武道館という場所で4人はそのことを改めて証明してみせた。拳を突き上げ、身体を揺らし、ときどき涙を潤ませながらーーとにかく照明がつきっぱなしなので、客の顔がよく見えるーー歓声を送り続けるオーディエンスも最高。「ベストライド」における凄まじいまでのシンガロングには思い切り心を揺さぶられてしまった。
Photo by 新保勇樹
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「筋トレしたくないから暴力反対。戦争反対、当たり前。
そんなこと言うのに理由なんている?」とキッパリ断言してから始まった「理由なき反抗(The Rebel Age)」からライブは早くも後半へと向かう。<君と最高の景色を今見ている>と歌われた「北極星のメロディー」、<武道館取んだ3年後赤でも恥でもやんぞ>というリリックをあえて歌わずに両手を広げて見せることで“有言実行だな”と噛みしめてしまった「ゴールド・ディガーズ」など、まるでこの日のために作られたんじゃないか?と思ってしまう楽曲が次々と披露される。クライマックスの始まりは「みんなわかってた?俺はわかってたよ。どうせこんな日が来るだろうなって」という言葉とともに演奏された「虫けらの詩」。さらに佐々木、HISAYO、アオキが渡邊のところに集まった状態で始まった「プシケ」、武道館に向けて制作され、アッという間に新しいアンセムとなった「夜空に架かる虹」などが放たれる。本編のラストは「花」。<届け届いてくれすべて失くしてもくたばっても/まだ世界は素晴らしい>と叫ぶように歌い、武道館全体が興奮と感動で包まれた。
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
佐々木はステージに残り、そのままアンコールへ。
最初に披露されたのは新曲「ロックンロール」。「元気でいる人は元気で。谷底の人にはロックンロールをあげる」という佐々木の言葉通り、この曲には4人にとっての“ロックンロール”の本質がそのまま刻まれている。何かを本気でやろうとすれば、それはおそらくほとんどの人に理解されない。孤独のなかで戦いは続くが、谷底では必ず新しい歌が響くはずだーーそんな思いが真っ直ぐに伝わってきたこの曲は、a flood of circleとオーディエンスのこの先の道を照らし出してくれるはず。武道館に来るときに九段下の駅前で見かけた、ガザへのメッセージを掲げた女性にもぜひ届いてほしいと思った。
さらに「花降る空に不滅の歌を」「Honey Moon Song」「ブラックバード」を演奏し、ライブはエンディングを迎えた。佐々木はステージの上でギターを片付け、来たときと同じように客席を通り、武道館を後にした。
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
翌5月7日(木)には東京・下北沢SHELTERでワンマンライブ『a flood of circle 20周年記念公演LIVE AT 下北沢SHELTER』を敢行したa flood of circleは8月にベストアルバム『革命未遂の蝶が見る夢』をリリースし、8月末から来年に1月にかけて34公演の全国ツアー『a flood of circle TOUR 革命未遂の蝶が見る夢』を開催することをアナウンスした。そう、このバンドはまだまだ転がり続ける。その先にある光景をまだまだ見ていたいーー2026年5月6日の武道館に足を運んだオーディエンスはまちがなく、そう感じているはずだ。
Photo by Viola Kam [V_z Twinkle]
<公演概要>
a flood of circle 20周年記念公演 『LIVE AT 日本武道館』
2026年5月6日 日本武道館