元STU48今村美月「戻ってこられて本当に嬉しい」 『恋愛裁判』「広島国際映画祭2025」舞台挨拶レポート
11月29日に開催された映画『恋愛裁判』公式上映&舞台挨拶に、深田晃司監督と元STU48キャプテンで広島県出身の今村美月が参加した。
11月28日から11月30日の3日間にわたり開催された「広島国際映画祭2025」。本映画祭は、復興と希望の象徴である広島の地でポジティブな力を持つ作品を紹介し、若手監督との出会いや先人の名作に光を当てることで、新たな文化交流を生み出すことを目的とした映画祭。本作は、同映画祭に特別招待作品として選出された。
上映が終了すると、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。観客の熱気が冷めやらぬ中、深田監督と劇中アイドル「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバー・三浦美波を演じた今村が登壇。深田監督は「夜遅くにもかかわらず、本作品を選んでくださったことに感謝申し上げます」と会場に感謝の意を伝え、今村は思い入れの深い地での舞台挨拶に「このような形で戻ってこられて本当に嬉しいです」と、故郷での上映に感無量の様子を見せた。
MCとのQ&Aセッションでは、全てオーディションで決定されたキャスティングについて聞かれると、深田監督は「映画制作において、最も重要な要素のひとつがキャスティング」と語り、「まずは齊藤(京子)さんに演じていただいた、山岡真衣役のオーディションが行われました。
当初難航していた主演選びですが、齊藤さんが日向坂46を卒業し俳優業に進出するニュースに着目し、プロデューサーからの後押しもあり、何より齊藤さんご本人も前向きで、素晴らしい演技を見せてくださったため、主演が決定しました」と経緯を説明。
主演決定後に行われた「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーのオーディションに参加した今村も、当時のオーディションの様子を「オーディション会場には様々なアイドルの方もいらっしゃっていて、緊張感と同時に興奮を覚えました。私自身の“自分なりのアイドル像”を表現しようと挑みました」と、当時の心境を明かした。
さらに深田監督は、キャスティング後、キャスト陣のリアルな経験を脚本に反映するため、大幅な加筆修正を行ったと語り「特に、実際のアイドル経験者である方々が加わったことで、彼女たちが“生きたアイドル論”を体現してくれると確信しました。私が頭で考えたセリフを語らせるよりも、彼女たちがそこにいるだけで十分リアルな言葉になるのです」と、キャスト陣への信頼を覗かせた。
美波役の今村は、元STU48のキャプテンとして、自身の経験を惜しみなく作品に提供。ライブシーンのMC進行やファンとの交流など、劇中の描写は今村の経験に基づいたリアルなものが多く、ライブシーンの中のMCはほとんどがアドリブで行われたことも明かされた。劇中のライブシーンには、実際のファンの方々もエキストラとして参加。
今村は「プロのファンの皆様が参加してくださり、どんな要望にも理想以上の反応を返してくださいました。本当にライブ会場と一体となったような熱気を感じました」と感謝を述べ、深田監督も「エキストラの方々の熱気が、あのシーンのリアリティを創り上げてくれた」と語った。
後半の裁判シーンについて、深田監督は「民事裁判のリアルな手続きは地味なものですが、映画では、あえてあの裁判を現実とは違う、皆さんがイメージするような“劇的な裁判”として描きました。そうすることで、アイドルと裁判という相容れない要素をより際立たせました」と説明。今村は、この裁判シーンを初めて見たときの衝撃を「私自身は裁判シーンには出ていなかったので、完成した映画を観てその内容を知りました。前半の華やかなライブシーンからの急展開に息をのみ、美波というリーダーの立場で“自分だったらどうするだろう”と感情移入しながら鑑賞しました」と、作品が持つ緊張感を表現した。
深田監督は、本作に込めたメッセージについて聞かれると「映画は影響力の強いメディアであり、プロパガンダにも利用されてきました。だからこそ、作り手は常に警戒し、距離感を保つべきだと考えています。
この作品は“アイドル業界は悪い”と断罪するものではなく、観客それぞれのアイドル観、恋愛観、そして自由や人権について深く考えていただくきっかけになれば幸いです。答えはひとつではなく、観客が自ら問いかけ、思考することで、作品が完成すると信じています」と語った。
トークセッションの最後には、今村からSTU48の最終オーディションが、まさにこの広島国際映画祭の会場で行われたという驚きのエピソードも飛び出し「ここに再び戻ってこられたことに、深い縁を感じています」と、今村の言葉に会場からは大きな拍手が送られた。深田監督は、「この会場で、アイドル今村美月が生まれ、そして今、俳優として再びこの地に立っている。この作品は、まさに彼女自身の新たな始まりを象徴しているのかもしれません」と語り、今村の今後の活躍に大きな期待を寄せた。
広島国際映画祭での上映は、東京国際映画祭に続いて国内2度目の上映となり、深田監督と今村は日本の観客から寄せられる熱気ある反応を肌で感じられたことへの感謝をあらためて伝え、舞台挨拶を締めくくった。
<作品情報>
『恋愛裁判』
2026年1月23日(金)公開
公式サイト:
https://renai-saiban.toho.co.jp/
(C)2025「恋愛裁判」製作委員会