【ライブレポート】ハンブレッダーズ、新メンバー加入後の初ツアー完走「17歳の気持ちにもう1回戻っている」
Photo:タマイシンゴ
ハンブレッダーズが先輩バンドを迎えて東名阪で繰り広げてきた対バンツアー「秋のグーパンまつりZ」。名古屋でKANA-BOONと、そして大阪でヤバイTシャツ屋さんとグーパンを交わしてきてのツアーファイナル、BLUE ENCOUNTとのツーマンが10月27日、Zepp DiverCity Tokyoで開催された。
ハンブレッダーズにとっては正式メンバーとしてukicasterが新加入して初めてのツアー。まさにここからまた始まっていく彼らの物語のスタートラインを目撃するような、フレッシュで熱い一夜となった。
BLUE ENCOUNT
先攻はゲストのBLUE ENCOUNT。先輩としての百戦錬磨ぶりを証明する安定感とパワーを見せつけた。田邊駿一の「はじめるよー!」の一言を合図に「Survivor」から手加減なしのアクセルベタ踏みだ。辻村勇太がオイコールで煽り、江口雄也のギタープレイと高村佳秀の叩き出すダンスビートが一気にフロアを熱狂させていく。
続けて現在のブルエンの名刺となっている楽曲「ポラリス」。エモーショナルなのに丁寧な田邊の歌が真摯なメッセージをまとって放たれる。さらにポップなダンスナンバー「coffee, sugar, instant love」でオーディエンスを踊らせる。軽快なギターのカッティングとゴリゴリのベースのコントラストが鮮やかだ。
田邊駿一(Vo/Gt)
辻村勇太(Ba)
「3曲しかやってないんだけど、充分すぎるほど贅沢感をもらってる」。早くも息を切らした田邊が笑顔でフロアに語りかける。ハンブレッダーズと対バンをするのは3年ぶり。当時はツーマンをするなんて思ってもみなかったという。
「あいつらすげえかっこよくなってきた、その上でやれるのがうれしい。でもすみませんが俺たち、あいつらに負けないくらいかっこいいんで!」。そんな言葉とともに「DAY×DAY」を全力で繰り出すと、「踊るぞー!」と辻村が叫んで「ロストジンクス」、さらにハンドマイクを握った田邊が「かかってこんかい!」と「VS」へ。「めちゃくちゃいい感じだよ、ありがとね!」。満面の笑みを浮かべる田邉に向けて大きな拍手が送られる。
高村佳秀(Ds)
江口雄也(Gt)
「(コロナの)第8波がくるらしい。そんなときに真っ先に標的になるのはライブなんだろうなと思います。もしかしたらこの感じがまた途絶えるかもしれない。
できれば残っていてほしい、でもわからないからさ。今日が最後だという気持ちで歌いたいと思うし、あなたにもきてほしいと思います」という不安定な世の中に向けた思いを込めて全身全霊で「バッドパラドックス」をぶち上げるとライブは最高潮に。オーディエンスのジャンプで先ほど以上に大きく揺れる会場が、ブルエンのメッセージをまっすぐに受け止めていく。
「あなたの好きな音楽はあなたを裏切らないから。できれば俺たちもあなたのそこに入りたい。全力であなたに歌って帰ります」。そんな田邊の言葉から披露された最後の曲は「灯せ」。思いの丈をすべて注ぎ込んだような歌声とバンドサウンドが瑞々しく弾けた。
BLUE ENCOUNTの圧巻のパフォーマンスに続いて、いよいよハンブレッダーズの出番。ukicasterがスポットライトに照らされてギターを鳴らすとフロアからは拍手が巻き起こる。
そこにでらしのベース、木島のドラムが入ってきて、ムツムロアキラが「スクールカーストの最底辺から青春を歌いにきました。ハンブレッダーズです、よろしく!」と挨拶すると、「ワールドイズマイン」のアッパーなビートが繰り出される。先ほどのブルエンの余韻をそれこそグーパンで打ち負かすような轟音が腹に響く。曲の最後ではムツムロとukicasterが合わせた膝にでらしが足を乗せてポーズ。自分たちのツアーならではの自由さがど頭から炸裂している。
「毎日嫌なこといっぱいありますけど、これさえあれば大丈夫。
そういうギターを今からこいつが弾いてくれます」。ムツムロに紹介されたukicasterがここでも最高のリフをかき鳴らし、2曲目「弱者のための騒音を」へ。メンバー4人で声を合わせて歌うサビのフレーズがZepp DiverCityに響き渡っていく。ムツムロとukicasterが背中合わせでギターを弾いているのを見ると、改めて「4人組になったんだなあ」という実感が湧いてくる。続く「プロポーズ」もそうだ。ギターのリフもドラムのフィルも今までと変わらないのに、なぜかバンドとしての塊感が増して聞こえてくる。「ラララ」と歌う4人は全員楽しそうだ。きっと気持ちの部分で全然違うのだろう。
ukicaster(Gt)
そんなわけで4人組のバンドとして突き進むハンブレッダーズ。ムツムロは「秋のグーパンまつりということで、まずは『グーパンまつり』ってなんなんですかというところから説明しないといけないんですけど」とこのツアーの名前の由来を話し始める。
もともと曲が終わるキメのときにでらしが演奏しないでお客さんとグータッチをしてコミュニケーションを取っているということがあったそうで、それはズルいじゃないかということで公平にグーパンができるイベントをしようということで始まったのがこの「グーパンまつり」。コロナ禍でお客さんとグーパンはできなくなってしまったが、その代わりに「先輩バンドを呼んでグーパンをかます」という趣旨に変えて開催されているのがこのツアーだ。
「BLUE ENCOUNT先輩、演奏めちゃくちゃうまかったじゃないですか?」(ムツムロ)「熱量が全然違う」(でらし)とブルエンを讃えるふたり。ムツムロは10数年前に地元の寝屋川VINTAGEでブルエンのライブを観ていたそうで、そのバンドと一緒にやれたことを喜んでいる。
でらし(Ba/Cho)
「ライブハウスにせっかく来てもらったんで、web上で見えるものだけじゃないよさを掴んで帰ってもらえたらいいなと思います」と、ライブハウスでライブを観たあとに作ったという「口笛を吹くように」を披露しフロアを温かい空気で包み込むと、一転してハードなリフが唸りを上げる「ガチャガチャ」をぶちかます。
さらにニューアルバム『ヤバすぎるスピード』から「才能」。
アグレッシヴなギターロックとヒップホップ的なニュアンスが同居した、まさにハンブレッダーズらしい1曲だ。緩急自在、泣かせて笑わせて叫ばせる、このバンドのユニークな振れ幅が存分に味わえる3連発。ukicasterのギターが曲をドライブさせ、木島のドラムがガッチリとハンドルを握り、でらしのベースとムツムロの歌がそこに色を足していく、美しいアンサンブルはどんな曲でも揺るがない。
木島(Ds)
ピュアな思いを歌い上げるムツムロの歌に負けじとukicasterのエモーショナルなギターソロも鳴り響いたラブソング「天国」を終え、オーディエンスが余韻に浸っているところでムツムロが再び口を開く。「さっきBLUE ENCOUNTのライブを『音源みたい』って言ったけど、間違えたなと思って。あんまりいい言葉じゃなかった。めちゃくちゃタイトでかっこよかったってことを言いたかった」。そんなことわざわざ言わなくてもみんなわかっていると思うが、ずっとモヤモヤしていたのだろう。「わかりますよ、言いたいことは」とフォローするでらしが優しい。反省しきりのムツムロにフロアからも温かい拍手が送られる。
「テンパると間違えちゃう。普通の人なんですよ。でも普通の人が歌わなきゃいけない歌もあると思っていて。そういうモヤモヤを抱えながらバンドをやってます」というムツムロの言葉は、まさにハンブレッダーズというバンドそのものだ。
「そんな歌をこれからも作り続けるんで」という宣言とともに鳴らされた「BGMになるなよ」はまさにそんな彼らのテーマソング。予定外の言葉があったからこそ、この曲のメッセージはより強いものになったと思う。続いて披露された「ユースレスマシン」もそうだ。彼らだからこそ鳴らせるアンセムが、力強いバンドサウンドに乗せて広がっていく。ますます気合いが入った演奏に思わず体が動く。
ムツムロアキラ(Vo/Gt)
初の全国流通盤『純異性交遊』に収録された「常識の範疇」の小気味よいカッティングがフロアを揺らすと、ライブはクライマックスへと向かっていく。
「本日10月27日。暦の上ではどうか知りませんが、俺の中ではまだ夏です!」と10代の甘酸っぱい恋模様を描いた「カラオケ・サマーバケーション」を繰り出して、ここでもメンバー全員のコーラスでまさに夏のようなみずみずしい空気を連れてくると、「新しくメンバーが入って、17歳の気持ちにもう1回戻っているっていうか。新しいスタートっていう気持ちでアルバムを作りました。自分達のオープニングテーマだなと思っています」というムツムロの言葉から鳴らされたラストソングは「光」。キラキラと溢れ出すサウンドに、オーディエンスも手拍子し、飛び跳ね、腕を振る。このツアーファイナルに「新しいスタート」を刻む、最高のエンディングだった。
その後アンコールで再び登場した4人はニューアルバムを引っ提げてのツアー開催を発表。でらしは地元・栃木の足利SOUNDHOUSE PICOに行ける喜びを語る。そして「ギター」で一気にフロアを盛り上げると、「東京の学生はBLUE ENCOUNTとハンブレッダーズを一緒のプレイリストに入れて聴いているらしい」と「フェイバリットソング」。リラックスした笑顔を見せながら歌うムツムロの後ろをukicasterとでらしが駆け回る。バンドをやる楽しさが今の彼らの中で最高に盛り上がっていることがその姿からも伝わってくる。
アルバム、そしてツアー、ハンブレッダーズの未来は続く。その確信をオーディエンスひとりひとりの心に刻みつけて、対バンツアー「秋のグーパンまつり」は終わりを迎えたのだった。
Text:小川智宏Photo:浜野カズシ(BLUE ENCOUNT)、タマイシンゴ(ハンブレッダーズ)
<公演情報>
ハンブレッダーズ 秋のグーパンまつりZ
2022年10月27日(木) Zepp DiverCity Tokyo