松本白鸚が「濡髪」演じる『双蝶々曲輪日記 角力場』ほか、バラエティ豊かな演目が揃った十月大歌舞伎
十月大歌舞伎が初日を迎えた。八月、九月とイレギュラーな形とはいえ、初日から楽日までほぼ無事に上演してきた歌舞伎座。今月も同じスタイルで幕を開ける。第一から第四部までの四部制で、それぞれ劇場の表も裏もその都度総入れ替えで、万全の準備をしての上演だ。
そして今月も秋らしくじっくりと楽しめるお芝居に、心浮き立つ舞踊とバラエティに配慮した狂言建てとなっている。
第一部は『京人形』。
日光東照宮の眠り猫で有名な左甚五郎のエピソードを盛り込んだユニークな舞踊劇だ。この甚五郎が廓で見染めた小車太夫に生き写しの人形を彫ると、不思議なことに人形は動き出して……。
中村芝翫の左甚五郎、市川門之助の女房おとく、中村七之助が京人形の精を演じる。
第二部は『角力場』。
義太夫狂言の『双蝶々曲輪日記』の二段目に当たる。大坂堀江の角力小屋では、人気の濡髪長五郎と素人力士出身の放駒長吉の取り組みが始まろうとしている。しかし放駒が濡髪に勝ってしまうという大番狂わせが起こる。実は濡髪はわざと勝ちを譲ったのだった。放駒は真剣に勝負しなかったことを怒り……。風格ある濡髪と若くて元気な放駒という対照的な二人の取組、達引が描かれるのが魅力だ。