【ライブレポート】ExWHYZ初の武道館公演『ExWHYZ LIVE at BUDOKAN the FIRST STEP』
Photo:sotobayashi kenta
新グループとしてスタートしてから僅か9カ月。ExWHYZ(イクスワイズ)が日本武道館でワンマンライブを行った。BiSHらを擁するWACKの所属グループで初の快挙で、7,000人の観客を動員した。4月発売の2ndアルバム『xANADU』でダンスミュージック路線を進化させつつ、より音楽性の幅を広げ、ツアーも各地で盛り上げてきた成果を存分に発揮。クオリティの高いステージが展開された。
開演前のBGMが唐突に止まり、同時に場内が暗転。入れ替わりでSEの「xANADU」が流れると、拍手と歓声が一斉に沸き上がる。ステージに1人ずつ入ってきたメンバーが踊るシルエット。
6人が並び、腰を屈めてバキバキのダンスになだれ込み、「BLAZE」を歌い出した。ゾクゾクするオープニング。クールな歌割りをリレーして、「ブドーカーン!」の叫びと共に炎が噴き上がる。緊迫感からの爆発。ダンスはより激しく、ボーカルは熱気が加速して、midorikoのシャウトも響いた。
「武道館!楽しむ準備できてますか?」とyu-kiが叫び、「Des Speeching」へ。バックの巨大な3面LEDにメンバーが1人ずつ大映しになり、会場内にレーザーが飛び交う。その中で浮遊感のあるハウストラックに乗り、言葉を速いテンポでたたみ込んでいく。
ゾラミナサンソワモミッサ……と呪文のようなリフレインが耳に焼き付いた。
「みんなとこの日を迎えることを想像しながら、歌詞や振付を作りました。ExWHYZからのありがとう、受け取ってください」
nowがそう語って歌ったのは、ライブタイトルにもなった「FIRST STEP」。さわやかなロックチューンを跳ねたり拳を回したりしながら歌って、躍動感が溢れていく。さらに、ランウェイを歩いてセンターステージに移り、「You&Me」に「SUPeR SIMPLe」と清涼感のあるEDMを続ける。会場一体のクラップが起きて、メンバーたちも晴れやかな笑顔を浮かべていた。メインステージに戻り、未発表曲ながら大きな盛り上がりを見せた「Shall We」では“Jump! Jump!Jump!”と跳ねて、オーディエンスをライドに誘う。ExWHYZとマスター(ファン)は共鳴し合い、日本武道館でも距離を近く思わせ、ひとつになっていた。
衣装のジャケットを脱ぎ映像とソロダンスを交えた特別な演出を施した「Wanna Dance」を颯爽とパフォーマンスして折り返し。2ndアルバム『xANADU』の新機軸のR&Bナンバー「Walk this way」はサビでメラメラする力強さが込められ、yu-kiのラップにも熱が入る。mayuの張りのあるボーカルからのフェイクもシビれた。
同じく幅を広げた1曲で、アッパーなドラムンベースの「メトロノーム」では、高速なトラックにメンバーごとの個性のある歌声が緩急を付け、聴いているだけで心拍数が上がるナンバーに仕上げられていた。
「武道館、最高ですね。だけど、みんなと私たちだったら、もっともっと行けると思うんですよ!」
後半、mayuがそう呼び掛けると、1stアルバム1曲目のインストゥルメンタル「xYZ」に乗ってランウェイでダンス。スクリーンにはExWHYZのグループコンセプトである「DANCE YOUR DANCE」のメッセージが映し出される。そのままセンターステージに移り、ダブテクノの「D.Y.D」へ。
mikinaとmahoが中央で歌ったり、mayuとnowが両端で歌ったりと繋げながら、アウトロのシャープなダンスにまた歓声が沸く。
さらに「みんな自由に踊ってください」と、アンセムのダンスチューン「ANSWER」はクラップで煽って盛り上げた。重低音が醸し出すグルーヴが心地良い。ハードなアシッドハウスの「Obsession」はフロアダンスを見せたり、真ん中で円になって踊ったり。mikinaの“見逃さないで”もクールにキマった。全員で跳ねながら歌う中でも、特にnowはやたら元気に弾けていた。オーディエンスもノリノリで、武道館はさながら巨大なクラブと化した様相だ。
ラストは「最後の最後まで一緒に歌いましょう!」と「STAY WITH Me」。
mayuから笑顔で歌い始めて、ステージいっぱいに広がったメンバーたちが交錯しながら、胸が温かくなるようなボーカルを聴かせていく。メンバーと観客が共に拳を突き上げながら「ウオッオー、ウォッオー」とシンガロングが響き渡っていった。
ExWHYZがハケると、すかさず起こったアンコール。5分ほど途切れることなく続き、再び現れた6人がフォーメーションにつく。mahoが“君が確かにくれた甘いもの”と歌い出すと、「オーーーッ!」と武道館をつんざく大歓声が起こった。前身グループであるEMPiRE時代の人気曲「MAD LOVE」。四つ打ちのキュートなアイドルソングを、片脚を跳ね上げる振りと共に軽やかに歌っていく。会場から「一生お前にMAD LOVE!」のコールも轟いた。
エージェントからマスターになったファンには、感動のサプライズだったことだろう。
ほとんどMCがなかったライブで、最後にそれぞれの想いが語られた。
「みんなとこの場所で会えて、同じ時間を一緒に過ごして、今、心の底から楽しい。そう思えていることがすべてです」(maho)
「ExWHYZはこれからもっともっと大きくなって、もっともっとみんなとたくさんの景色を見ていきたいなって、今日改めて思いました」(now)
「EMPiREからExWHYZになったことが良かったのか、人によって違うと思うけど、今、自分が感じている気持ちを信じてます。これからもこの6人で、生まれ変わって正解だったと証明できるように頑張っていきます」(mayu)
オーラスは「Everything」。ExWHYZとしてスタートしたときのメンバーたちの心情のようにも思えるミディアムバラードを、噛み締めるように歌い上げる。“全部見逃さないで全部届いているよ”と繰り返す温かい情感。ラップにはEMPiREの楽曲の歌詞がちりばめられていて、手をゆっくり左右に振りながら歌い、会場ではスマホライトが一緒に振られる。
その中でステージを後にしていく6人。日本武道館は温かい拍手と多幸感に包まれていた。
最後のMCの中で、midorikoは「(マスターが)家族や職場の人を誘ったとたくさん聞きました。私たちのことをあまり知らないで来てくれた方もいると思います」と話していた。たぶん、そうした人たちもたっぷり楽しめた気がする。
WACKグループ初の日本武道館、EMPiRE時代からの軌跡、本格的なダンスミュージックへのシフト……。そんな物語性もメンバーやマスターの感動を押し上げたことだろう。それはそれとして、この日のステージはとにかく心地良いグルーヴに浸れて、上質な音楽とパフォーマンスの余韻が残った。
予備知識なしでも、ライトな幅広い層にも響く。それこそがExWHYZの可能性。何年か後に振り返ったら、この武道館すら、ひとつの通過点と位置づけられているかもしれない。
Text:斉藤貴志Photo:sotobayashi kenta
<公演情報>
ExWHYZ LIVE at BUDOKAN the FIRST STEP
5月13日(土) 日本武道館