寂しく枯れたアメリカを描いた作品はどこか日本的『アンドリュー・ワイエス展』
イラストレーション:高松啓二
映画・音楽・舞台など各ジャンルのエンタメ通=水先案内人が、いまみるべき公演を紹介します。
【水先案内人 高松啓二のおススメ】
アンドリュー・ワイエスの絵を初めて見たのは、1978年神戸三越の展覧会で、ボクは画学生だった。岩に木のオールが立てかけてあるのを見て何でこんなところに?と思ったらなんと絵!描いてあるというよりも存在しているのだ。絵のタイトルは「決闘」。友人から卵の黄身に絵の具を混ぜるテンペラという技法だと聞いた。あまりの衝撃でさっそく試してみると色がのりにくいのと母に食べ物を粗末にするなと叱られ、それっきりになってしまった。以来、ワイエスに惹かれた。
今回の東京都美術館の展覧会はワイエス没後、初となる。
ワイエスの父は高名な挿絵画家N.C.ワイエス。壮大で力強い画風で知られており、映画で言えばハリウッド大作のようだ。アンドリューは真反対で、寂しく枯れたアメリカを描き、ニューシネマみたい。ボクがワイエスの絵が好きな理由でもある。
彼の技法は水彩、テンペラ、ドライブラッシングである。展示は初期から晩年まで網羅していてモチーフによって年代がわかるのが面白い。というのは彼の描く世界は家の近所や身の回りのモノだからだ。中期のオルソンハウスの納屋は多くの作品を生んでいる。
風や匂いなど目に見えないものを表現しようと試みたりする。住人のクリスティーナは下半身が不自由だが、眼差しに力強さを感じる。また、窓が多く登場し、絵に引き算をするように構図もシンプルでワイエスの画風が確立いていく様子がわかる。窓越しに後ろ姿の妻のベッツィが双眼鏡を覗いている作品があるが、直接本人を描かかないのも特徴のひとつだ。
朽ち果てる美や奥ゆかしい感覚は、どこか日本的である。そのせいか多くの作品が日本企業の所蔵になっている。ちなみにボクが感動した「決闘」はない。
<開催情報>
『東京都美術館開館100周年記念アンドリュー・ワイエス展』
会期:2026年4月28日(火)~7月5日(日)
会場:東京都美術館
時間:9:30~17:30(※金曜日は~20:00)、入室は閉室の30分前まで
休室日:月曜、5月7日(木)(※ただし5月4日(月・祝)、6月29日(月)は開室)
料金:一般2,300円、大学・専門学校生1,300円、65歳以上1,600円
公式サイト:
https://wyeth2026.jp/