新国立劇場《蝶々夫人》"理想の蝶々さん"小林厚子がいよいよ登場
歳は若くとも、蝶々さんは自分の人生をしっかりと全うした女性。大変なパッセージやドラマティックな表現、それは生ききった人の音楽、言葉なのだと思います。
だから15歳の時は子供っぽい声を出そうとか、18歳になったら大人っぽくなどとは考えていません。そう思わなくても、音楽がそのように作られています。自然に音楽と向き合っていけば、プッチーニがちゃんとそういう道筋に連れて行ってくれるのです。近年は特にそう感じるようになりました。
ただ、本当に大変な役です。出ずっぱり、歌いっぱなし、体力も精神力も相当必要です。
オーケストラも厚く、心底大変な役ではありますが、ほとんどは言葉をしゃべっているんです。ドラマを細やかに届けられるようにと思っています」
2007年に藤原歌劇団の《蝶々夫人》で主役デビュー。しかしスター街道まっしぐらというのではなく、そこから10年間もほぼ毎年新国立劇場でカヴァー・キャストを務めるなどして経験を積み、一歩一歩着実に歩みを進めてきた。「振り返ってみると、あの10年は私にとってとても大切だったと思います。私はたぶん、声帯が小さいほうではないのですけれども、そうすると出来上がるのにやっぱり時間がかかるんですね。