柚希礼音、加賀谷香、織山尚大ら出演 黒田育世の再演譚シリーズ第2弾『波と暮らして』『ラストパイ』上演決定
一方『波と暮らして』はオクタビオ・パスの小説があり、ストーリー性を帯びているものです。状況を克明に説明するものではなく、パスが作品に秘めた本心をダンスで綴っています。物語性を孕んでいる『波と暮らして』と、物語性を排し、生命力を孕んでいる『ラストパイ』という対照的な二作品で、ダンスとは両極に触れることができるものだということをお客様にお見せ出来たらと思います。
『波と暮らして』の柚希さんの役は、当初は男性の方を探していましたが、今回はよりポエティックにストーリーを紡いでいける方を念頭に、役者でもあり、ダンサーでもある方というのが重要でした。そんな時に柚希さんの踊っている映像を拝見して、雷が落ちたような衝撃を受けました。一瞬の映像でしたが柚希さんなら、パスが<ある男>に背負わせたものを無意識に吐き出してくれるのでは、と。そして本作はバレエのテクニックを基に振り付けているので、美しいバレエのラインを持つ方という意味でも、柚希さんしかいないと思いました。加賀谷さんは、どんなに言葉を尽くしても、振付家はその作品のすべてをダンサーに伝えきれるものではない中で、振付家の目を通して振付を体現することができる方です。