【ライブレポート】ハンブレッダーズ“やばすぎるワンマンツアー2023”ファイナル公演
Photo:タマイシンゴ
ハンブレッダーズが5月17日、東京・NHKホールで全国ツアー“やばすぎるワンマンツアー2023”のファイナル公演を行った。アルバム『ヤバすぎるスピード』を引っ提げた今回のツアーは、3年ぶりに“声出し解禁”。歓声とシンガロングが響き渡る、喜びと興奮に貫かれたステージとなった。
ハンブレッダーズが初めてのワンマンツアーを行ったのは、2019年の春。筆者は渋谷CLUBQUATTORO公演を観る機会に恵まれたのだが、10代後半~20代前半のオーディエンスが全力で歌い、拳を突き上げる姿は今もはっきりと記憶に刻まれているし、“歌を共有することで生まれる圧倒的な一体感こそがこのバンドのライブの核なんだな”と強く感じた。
この年の夏フェスで知名度を上げたハンブレッダーズは、翌年2月に1stフルアルバム『ユースレスマシン』を発表。ここからさらなる快進撃が始まるーー誰もがそう思った矢先、コロナ禍に突入してしまった。言うまでもなくコロナ禍は、世界中のミュージシャンに深刻な影響を与えた。
その度合いを比較することなど出来ないが、ライブハウスでデカい音を鳴らし、歌を共有することでライブを作り上げてきたハンブレッダーズにとっては途轍もないダメージだったはずだ。
しかし彼らは、制限やルールの範囲内でライブを継続し、作品を発表し続け、バンドとして確実に成長してきた。昨年10月にはサポートギタリストを務めてきたukicasterが正式に加入。4人体制となって最初のアルバム『ヤバすぎるスピード』は、つんのめるようなスピード感と研ぎ澄まされたアンサンブル、濃密な感情が漲る歌が響き合う素晴らしい作品となった。そして本作を携えた今回のツアーで、ついに“声出し解禁”(マスクは常時着用)。歌を共有し、バンドと観客が互いの思いをぶつけ合い、交換し合う、本来のハンブレッダーズのライブが実現したのだ。
ライブはアルバム『ヤバすぎるスピード』の1曲目に収録された「起きろ!」からスタートした。〈無敵に思えた青春だって雷が落ちた感覚だって〉というフレーズで早くも観客のシンガロングが巻き起こる。
「“歌って”とか“踊って”とか、そういうルールはまったくないんですけど、このツアーファイナルに関しては、さすがにみんなの声が聞きたいです」(ムツムロ アキラ/V&G)の言葉に導かれた「ワールドイズマイン」ではハンドクラップが自然発生し、サビはもちろん大合唱。
ムツムロ アキラ(Vo&Gt)
ステージ狭しと動き回り、観客とコミュニケーションと取るでらし(Ba)、派手さと激しさを共存させたギターを響かせるukicaster、正確にして性急なビートでバンドの軸を担う木島(Ds)によるアンサンブルも以前に比べて明らかに向上。ホール会場ならではの豊かな音響も気持ちいい。
でらし(Ba)
さらに「すげえな、NHKホール。この景色、マンガだったら絶対、見開きページだ」(ムツムロ)というMCからはじまった「見開きページ」、日常のなかにある“いいね”と感じる瞬間を描き出した「いいね」を披露。曲を重ねるごとに高揚感と解放感が上がっていく。
ハンブレッダーズのライブは、きわめてオーソドックスだ。NHKホールだからといって映像を使ったり、普段とは違う演出を取り入れることもなく、「いつもみんなが再生している曲をたくさんやります」(ムツムロ)と楽曲を演奏するだけ。
“歌って”“手を挙げて”みたいな煽りもないし、何ならMCもかみ合わないが、不満や不足はまったくなく、“音楽が鳴り、観客が受け止める”というきわめて豊かな空間だけがそこにあるのだ。
木島(Ds)
セットリストの中軸は、アルバム「ヤバすぎるスピード」の楽曲。ムツムロとukicasterのギターのハモリではじまった「ヒューマンエラー」、ロックとファンクがせめぎ合うサウンド(木島、でらしが生み出す強靭なグルーヴ!)とともに、同調圧力をぶち抜き、自分たちがやりたいことに突き進む姿勢を描いた「才能」、そして、思春期のピュアすぎる恋愛を映し出す「アイラブユー」。メンバー4人それぞれのプレイヤビリティとキャラを活かしまくったステージングは、今回のツアーによって大きくレベルアップしたようだ。
ukicaster(Gt)
ロックの衝動をそのまま詰め込んだ「ギター」からライブは後半へ。美しい光をちりばめたライティングも印象的だった「光」、〈初めてギターをかき鳴らした〉瞬間の衝動と熱量をリアルに響かせる「ヤバすぎるスピード」によってオーディエンスの興奮はさらに引き上げられた。
「真っ当に生きてる人、頑張ってる人が報われたらいいなと思って、暮らしてます」(ムツムロ)というMCからはじまった「東京」を丁寧に演奏した後、ムツムロはこのツアーを振り返った。2020年以降もライブは続けてきたが、声出しが解禁になり、気持ちとしては“3年ぶり”という感覚だったこと。
コロナ禍の時期、ライブハウスのスタッフ、PAや楽器テックなど、音楽に関わっている人たちが苦しんでいる姿を間近で見ていたことーー。
「“戻った”とは言いたくない。みんなが続けてきてくれたから、今日を迎えられたわけで。何があってもバンドを続けようと本当に思っています」と涙ながらに語る姿に、客席からはこの日一番大きな拍手が送られた。
さらに「みんなの孤独とかはわからないけど、生き続けてほしいなと思います」と「BGMになるなよ」を放つ。本編ラストは「THE SONG」。自分たちの歌で、君たちの気持ちを引き上げてやる!という真っ直ぐな思いが広がり、会場全体が豊かな感動で包まれた。
とんでもなく大きな“アンコール”の声に導かれ、再びステージに登場した4人はまず、新曲「またね」(アニメ「BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS」エンディングテーマ)を披露。
そして「この3年間、いちばん声出しありでやりたかった曲をやります。自分たちの曲を聴いているときは、17歳に戻してやるという気持ちで音楽を作っています」というムツムロの思いがこもった言葉から「DAY DREAM BEAT」。〈ヘッドフォンの中は宇宙〉というラインを全身で歌う観客の姿に強いく心を揺さぶられてしまった。さらに“辛いときは逃げてもいい”とメッセージする「逃飛行」を放ち、オーディエンスのテンションは頂点に達した。
まったく鳴りやまない拍手とコールに呼び戻された4人は、「ライブハウスで会おうぜ」を演奏。2020年4月に発表された、ライブハウスへの愛とエールを込めたアッパーチューンだ。熱気と喜びが交じり合うなか、ライブは大団円を迎えた。今回のツアーは、バンドにとってもきわめて重要なポイントとなったはず。
この先のフェスやイベントなどを通し、ハンブレッダーズの存在はさらにクローズアップされることになるだろう。
Text:森朋之Photo:タマイシンゴ
<公演情報>
ハンブレッダーズ “ヤバすぎるワンマンツアー2023”
2023年5月17日(水) NHKホール