【ライブレポート】a flood of circleとストレイテナーが対バン 真正面からぶつけ合う灼熱の夜
photo by Viola Kam (V’z Twinkle)
a flood of circleが今年9月に発表したシングル『ゴールド・ディガーズ』のリリースツアー『HAPPY YAPPY BLOOD HUNT』の東京公演を10月25日にSHIBUYA CLUB QUATTROにて開催した。
本ツアーで唯一の対バン形式となったこの日、ゲストとして招いたのは佐々木亮介(Vo/G)の依頼を受け、『ゴールド・ディガーズ』でプロデュースを担当したホリエアツシ(Vo/G/P)がフロントマンを務めるストレイテナー。交わりそうで交わってこなかった2バンドの共演であり、互いが己のスタイルを真正面からぶつけ合う灼熱の夜が繰り広げられた。
期待感の表れであろう、観客のどデカい拍手で迎え入れられたストレイテナーはホリエの「行くぞ、渋谷!」の掛け声とともに「246」を鳴らし、コクのあるメロディとグルーヴで一気に会場を飲み込んでいく。比喩的な表現ではなく揺れるフロア。
ナカヤマシンペイ(Ds)の叩き出すリズムで察知した観客が歓喜し、大山純(G)と日向秀和(B)のソロも炸裂した「KILLER TUNE」へと続けていき、序盤から一気に畳み掛けるかのような勢いを見せる。彼らが素晴らしいのはサウンドの激しさに頼らないところ。殊更、煽るような素振りも見せず、あくまで信じるロックを鳴らし、そのダイナミズムで観客を魅了していくのだ。
ライブ中盤でのMCでも触れていたように、実は10日前に結成25周年を記念した日本武道館公演を終えたばかりであったが、佐々木からのオファーに対してホリエのみならず、メンバー全員が快諾。貪欲に新たな刺激を求めるライブバンドだからこその決断であり、そうやって駆け続けてきたからこその重みがある。
「いい夜にしましょう」と手短にホリエが挨拶をした後もテンション感を落とすことなく、大山の心浮き立つギターフレーズから始まり、最高潮を何度も繰り返す「From Noon Till Dawn」へ。4人で呼吸を合わせてからなだれ込むクライマックスも秀逸で、そのムードを保ったまま突入した「宇宙の夜 二人の朝」、ホリエがピアノを奏でて壮大なバラードから鮮烈なバンドサウンドへシームレスに移行する「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」と密度の濃い時間が展開されていく。
ここでホリエがa flood of circleの新作に関わったことに触れ、佐々木から衝撃を受けたと伝えられ凄く嬉しかったという「Lightning」を披露。続けて、「群像劇」や「彩雲」というきらびやかなミドルチューンもドロップし、いい空気感を染み渡らせていった。
そして、神秘的な雰囲気をまといながら疾走していく新曲「Silver Lining」を鳴らしてから、終盤戦はアグレッシブに攻め立てていく。激しいドラミングでフロアからコールを巻き起こし、会場全体の温度がグッと上がった「TRAVELING GARGOYLE」、あまりの盛り上がりに日向から笑みがこぼれ、ナカヤマが天を仰ぐように上空を見つめた表情も印象的だった「シーグラス」、締めくくりにはイントロが鳴った瞬間に観客もリミッターをさらに外さざるを得ない「TRAIN」を投下。
重みがあるのにキレが良すぎてすっきりと聴こえてくるサウンドでフロアは狂喜乱舞。激しいライティングも相まって、圧倒的な絶景が広がっていき、ライブを終えても止まない歓声と拍手を受けながら「最高の夜にしようぜ!」とホリエが告げ、見事にバトンを繋げていった。
主役であるa flood of circleは、佐々木の「おはようございます、a flood of circleです」という恒例の挨拶から「Are You Ready?」と絶叫し、「Blood Red Shoes」から極上のロックンロールパーティを開始させる。アオキテツ(G)の鋭いギター、HISAYO(B)のうねるグルーヴ、すべてを突き上げる渡邊一丘(Ds)のリズム、ど真ん中に位置し、アジテーションを繰り返しながら歌い叫び続ける佐々木という布陣はまさに鉄壁。その怒涛の踏み込み具合に誘発された観客は両手を突き上げ飛び跳ねていくのだ。
イカれたダンスチューン「美しい悪夢」では渡邊、アオキ、HISAYOとソロをぶっ放し、イントロから激しいクラップが鳴り響いた「Dancing Zombiez」も音の絡み合いが極上。佐々木の存在感が注目されがちではあるが、個々の才覚が発揮されてこそのバンドだということを突きつける。
「乾杯!」と佐々木が大声を上げてアルコールでノドを潤した後、ハンドマイクを持ちドロップされたのが「狂乱天国」。
「ふざけろよ Baby」「All I want is Rock’N’Roll music」と叫ぶ佐々木は持っていた缶を投げ捨て、黄色いライダースのジッパーを開けてより解放状態。やり過ぎぐらいがちょうどいいと言わんばかりにぶち上げていく。
「SHIBUYA CLUB QUATTRO、246を通ってきたよ」とストレイテナーがプレイした曲に絡めて観客へ語りかけ、「かますぞ!」と宣言してからの「Sweet Home Battle Field」は「命賭けて 叫ぶ」という歌詞を地で行く暴れっぷりを見せる。彼らならではのライブ感がたまらない。
「誰になんて言われてもいい、オレはいい、ここはいい……言われるかも、くたばれって」と佐々木がつぶやき、そこからいきなり強烈な歌を響かせたのが「くたばれマイダーリン」。その場の空気を汲んだ言葉が曲をより膨らませ、忘れられない瞬間にする。彼らのライブではお馴染みの光景ではあるが、この日もグッと心を掴まされた瞬間だった。
ゆったりと弾き語りスタイルで始まり、そこへ3人が途中から寄り添っていく「月面のプール」で包み込んでから、佐々木の「Baby……って意味は知らねえ!響きで言ってる!」とHISAYOが少し吹き出してしまう言葉から、「それぐらいでいい、サボってもいいし、好きにしてくれBaby」、「忘れるなよ!世界は君のもの!」とシャレたタイトルコールで披露したのが「世界は君のもの」。
このあたりのスイッチの切り替えも見事。熱く爽やかな風を吹かせ、佐々木とアオキが互いに向き合ってギターをかき鳴らしたり、佐々木とHISAYOが渡邊に近寄って視線を交わしたり、ライブならではのやり取りも嬉しいところ。
集まった観客へ感謝を述べ、ここに大事なことがあると「Boy」、赤い照明がよく似合う「プシケ」を連投。アオキやHISAYOもフロアへ身を乗り出すようにプレイし、より生まれる一体感。そんな会場へ放ったのが抜群の瞬発力と熱量を持つキラーチューン「シーガル」だからもうたまらない。フロアはグチャグチャ、突き上げられる拳の力強さも凄まじく、熱狂がどこまでも止まらない。
ヒートアップし続ける中、「向こう側へ行こうぜ!」という佐々木の誘いからプレイされた「ゴールド・ディガーズ」で会場中から大歓声が鳴り響いたのも当然だろう。ロックンローラとしての矜持を宣言する、本編ラストにセレクトされた「月夜の道を俺が行く」のパワフルさも抜群だった。
アンコールではロックンロールの妖しさ満載な「HAPPY YAPPY BLOOD HUNT」をぶちかましてから、「如何様師のバラード」の途中にストレイテナーの「KILLER TUNE」を挟み込むスペシャルな仕様。終盤では佐々木がフロアへ飛び込み、観客の上に立って歌う振り切れたシーンも生まれるほどであった。
本ツアーを終えた後も立ち止まることを知らない彼らは、a flood of circle流ロックンロールサーカス『A FLOOD OF CIRCUS 2024』を全4カ所ツーマン形式で開催。「これまでと違う形でやってみる。4カ所にやばい4組を誘ってる」と佐々木もコメントを寄せているが、他では味わうことのできない最高の宴が繰り広げられることは間違いなく、そちらにもぜひ注目して欲しい。
Text by ヤコウリュウジphoto by Viola Kam (V’z Twinkle)
a flood of circle "HAPPY YAPPY BLOOD HUNT"
10月25日(水) SHIBUYA CLUB QUATTRO