佐々木亮介主催『雷よ静かに轟け』 貴重なセッションが実現!中村一義(Acoustic set with 三井律郎)をゲストに迎えた第七夜をレポート
Text:森朋之Photo:シンマチダ
a flood of circleの佐々木亮介が主催する弾き語りツーマンシリーズ『雷よ静かに轟け』の第七夜が開催された。会場は映画『浅草キッド』の舞台ともなった"浅草フランス座演芸場東洋館"。これまでに中田裕二、NakamuraEmi、奇妙礼太郎、古市コータロー、小山田壮平、詩人・御徒町凧が出演し、全公演ソールドアウトしている。今回のゲストは、中村一義(Acoustic set with 三井律郎)。10代の頃から中村の音楽を愛聴し、影響を受けてきたという佐々木。両者の貴重なセッションが実現するなど、この場所、この夜だけの特別なステージが繰り広げられた。
開演は19時半。1時間くらい前に会場に着くと、辺りはいつものように海外からの観光客でにぎわっている。
“第六夜”が行われたのは4カ月前の6月22日。今年の夏は本当に暑かったな......などとボンヤリ考えていると客席の照明が落とされ、第1幕・中村一義のステージがはじまった。
中村一義
「佐々木くん、今日はありがとう!」と楽屋に向かって挨拶した後、まずは「いつだってそうさ」。躍動感と抒情性を同時に感じさせるボーカルが響き、いきなりグッと引き込まれる。〈誰かに出会った、誰かが変わった。〉というフレーズも、このイベントの趣旨としっかり重なっていた。〈そう、何度でも遠く、歩き出せる。〉と高らかに歌い上げる「世界は変わる」では“ラララララ~ララ”のコーラスに合わせて手拍子を要求し、自然な一体感を演出した。
東洋館は、中村がトーク&アコースティックライブ『どうでい!?』を行っている会場。「普段は僕がゲストをお呼びしてるんですけど、初ですね、ここに呼んでもらえるというのは」「まさか選挙の日にライブをやってるとは思ってなかったですけど。これも縁だと思って。“音楽は楽しいな党”の中村一義でございます。清き一票を(笑)。」というMCに続いたのは、浮遊感のあるギターフレーズと鋭利なストロークに導かれた「セブンスター」。2002年の楽曲だが、〈忘れてるフリはしない。/心に本当でいたい〉という歌詞は、2024年の世界の中でより強い意味を放っていた。
三井律郎
さらに2020年のアルバム『十』収録曲「愛にしたわ。」、今年の春にリリースされた「春になれば」と様々な時代の楽曲を披露。
緻密にして奔放な構成を持つ楽曲を的確に捉え、中村の歌を際立たせる三井のギター演奏も素晴らしい。「律くんと弾き語りやるのは1年ぶりくらい?やっぱり相性いいよね」という中村もうれしそうだ。
「佐々木くんとは地元が近い」「いろんなものを僕からパクったって言ってました(笑)。僕もビートルズからはエグいですけどね」みたいなトークを挟み、「君ノ声」へ。〈いろんな声が広がる、この街にさ、君の声が聞こえてくる。〉というフレーズ、〈ラ、ラ、ラ、〉の大合唱が重なる。最後は「1,2,3」。この先のあるはずの光を真っ直ぐに歌い上げ、豊かな音楽空間を生み出してみせた。
いつものようにジーンズ、革ジャン姿でステージに上がった佐々木亮介は、「天使の歌が聴こえる」でライブをスタートさせた。〈あなたが生きてる今日は史上最高だ〉というフレーズを全身で叫ぶ佐々木。生のギターと歌をダイレクトに感じ取れることがこのイベントの醍醐味だと、改めて実感させられた。
「浅草のみなさま、“音楽盗み党”の佐々木亮介でございます(笑)。」というジョークから、「雷よ静かに轟けBlues」へ。“ようこそ、雷よ静かに轟け。選挙の後の雨、透き通った空気”“中村一義さんが来るなんて、夢にも思ってなかったよ。不思議な夜だ”と即興で歌い上げ、観客は手拍子で応える。
佐々木亮介
さらに中村の音楽からの影響が反映されているという、a flood of circleの最初の楽曲「ブラックバード」(歌い終わったときに中村が舞台に顔を出し、両手で大きな“〇”を作っていました)を披露した。
中村一義の音楽を聴き、“ひとりでこんな音楽をやれるんだ”と衝撃を受けたこと、“愛の前に博がつくような歌を歌う人が、ジョン・レノン以外にいたんだ”と思ったことを語った後、「陽はまた昇るそれを知りながらまた朝を願う」へ。孤独や諦めを抱えながら、明日への思いを綴った歌詞を渡すように歌う姿は、観客ひとりひとりの心に強く刻まれたはずだ。
「この前PUFFYと共演したときに、PUFFYの曲を覚えたんですよ。もったいないから、もう1回やろうかな」という言葉から始まったのは、「誰かが」(PUFFY/作詞・作曲:チバユウスケ)。続く「カメラソング」では、静かなギターの音色とともに、目の前の人に話しかけるように〈君はいっつもシャッターチャンス/ずっと可愛かったよ〉と歌う。
「中村一義さんと話していて、ひとつの解を得ました。愛という言葉を歌うときは、子供じゃなくちゃいけない。自分の場合、この曲があります」と歌われたのは、「Boy」。
〈OhYeahKeepOnRolling〉のリフレイン、そして「何があっても、これしかないってことですね、たぶん」という言葉から最新アルバム『WILD BUNNY BLUES / 野うさぎのブルース』(11月6日(水)リリース)収録の「虫けらの詩」につながる場面は、この日のハイライトだった。ラストは「Honey Moon Song」。ロマンティックでヒリヒリしたロックンロールは、佐々木亮介の真骨頂だ。
最後に中村、三井が呼び込まれ、再び地元トークを繰り広げた後、「キャノンボール」(中村一義)をセッション。それは観客にとってはもちろん、佐々木にとっても大きな意味を持つ音楽の邂逅だったと思う。会場の外に出ると、気持ちいい秋雨。選挙速報を見てから、まだまだ賑わう浅草の街を歩く。季節はめぐり、また音楽が生まれる。
次回の『佐々木亮介弾き語り興行 "雷よ静かに轟け" 第八夜』は12月21日(土)。いろんなことが起きた2024年の終わりに、一期一会の音楽をぜひ味わってほしい。
左から)三井律郎、佐々木亮介、中村一義
<公演情報>
『佐々木亮介弾き語り興行 "雷よ静かに轟け" 第七夜』
2024年10月27日(日) 東京・浅草フランス座演芸場東洋館
出演:佐々木亮介、中村一義(Acoustic set with 三井律郎)