TRiDENT、6周年フリーライブで示した覚悟 LIQUIDROOMへ続く新たな戦い
Photo:Kota Aoki
Text:横堀つばさPhoto:Kota Aoki
1年目、東京・渋谷CLUB QUATTROでのワンマンライブ。2年目、ファンのリクエストで構成されたセットリストを披露する単独公演。3年目、すべてのディスコグラフィーを網羅するワンマンショー。5月1日の結成日を迎えるたび、自由な発想でまだ見ぬ企画を繰り広げてきたスリーピースバンド・TRiDENTが、6周年のお祝いにセレクトしたのはフリーライブだった。
2026年5月5日、東京・Veats Shibuyaで開催された6周年記念企画『天下無双!無敵の無料ワンマンライブ』。アニバーサリーだからといって、特段感傷的になるわけじゃない。ただひたすらにはしゃぎ回り、暴れ、踊り尽くす3人の風姿は、メジャーデビューから半年を経た現在の充実っぷりをひしひしと伝えていたのである。
追い風をたっぷりと背中に受けた彼らの様子は、SEを追い抜いて巻き起こったクラップを打ち返すようにASAKA(vo,g)とSERINA(b,cho)のボーカリゼーションが突き抜けたオープニングナンバー「JUST FIGHT」から昭然と示された。
5弦ベースをぶん回し、極太のローを轟かせるSERINAも、ハイポジションに設置したクラッシュシンバルで合奏を加速していくNAGISA(ds)も、TRiDENTがまさしく新たな戦いの最中にあることを指し示し、開幕早々カオスめいた客席を演出していく。
「ぶち上げて行こうぜ!」と連投した「NEW ERA」然り、「今日は6周年ワンマンということで何でもありやから。みんなでドンちゃん騒ぎができたら」と投下した「Haha!」然り、乱れ打つフィルインやスラップを身上とする楽曲たちが続く。と、ここでハッとさせられるのは、彼女たちの楽曲がどこまでも今この瞬間を信じ、現前の壁までも笑ってぶち破ろうとする姿勢で満たされていることだ。〈ここが新時代!新時代!〉と夜明けを宣言し、〈楽しまなきゃ意味がないよ〉と言い切ってみせる。オプティミスティックな美辞麗句に収まってしまってもおかしくない言葉を、3人が確かな手応えを持って歌い続けられるのは、鼻先で広がる汗まみれの美しきフロアがあり、巨大なシンガロングがあるからなのだろう。
そして、そもそもそうした光景の根源に存在しているのは、焦燥に駆られても、伸ばした手から夢がすり抜けていきそうでも、ロックバンドとして屹立し続けたTRiDENTそのものである。つまり、彼女たちは互いに支え合い、互いに発破をかけ合うことによって、来たるべき黎明の時を共に迎えようとしているのだ。
3人がオーディエンスを見つめる慈愛を湛えた眼差しは、そんな相互関係を見事に具現化していたのである。
とはいうものの、徹頭徹尾ポジティブでいることは不可能だ。だからこそ、深く浸透していったのが、「みんなが待っていた曲です!」とパチンコ『e冥妃転生』へ書き下ろした新曲「メイヒテンセイ」でBPMの速い四つ打ちから怪しげなダンスパートまでを駆け回ったのち、「こっからはしっとりとした時間です」と突入した中盤戦だった。
ショパンの「夜想曲第2番 変ホ長調 作品9-2」を引用しつつ、夕焼け色の舞台で堂々とロックオペラを鳴らした「Nocturne」、揺らぎを内包したASAKAのファルセットで<夢の一つも叶えられないや>と弱音を溢していく「NEO FUTURE」、大熱唱をドラムロールで増幅させ〈かけがえのない宝物〉とがなりを込めた歌唱で刻み込んだ「be with you」。確かに、ここへ連なった作品は、「バラードだと思っていた曲に対して、“そんな速い曲をバラードとは呼ばない”と言われた」というエピソードからも窺える通り、しっとりと呼ぶにはいささかアッパーな楽曲かもしれない。しかし、流麗な同期音や影を落とした唱法で紡がれたこれらは、コテンパンにやられて再起のためにもがく夜を一つひとつ掬い上げていくではないか。どんなテンポだろうとも、旋律だろうとも、軋んだ心の叫びへスポットライトを当てられる。TRiDENTはそんなバンドなのだ。
ここまで存分に描出してきた、確かな未来を手繰り寄せんとするアティチュードと、その裏に隠れた枕を濡らした日々。時を止めるがごとき静寂からASAKAの凛とした歌声が響き渡った「CRY OUT」は、この両者を繋ぎ合わせた1曲だ。深紫の明かりに彩られる中、トボトボと歩いた帰り道やマスクの下で鬱憤を積み上げた過去を浮かび上がらせると、SERINAの蠢くソロを経て、ASAKAがチョーキングとタッピングを駆使した旋律を飛ばしていく。〈今がその時だLoser〉の1ラインを号砲に、5本の光が上昇していく。曙光を想起させるワンシーンから会場に鳴りはためいたチャントは、〈叶わない夢なんかじゃないとここで証明してみせるよ〉なんて1行を強く裏付けていた。
「この6年間、順調だったことも、悔しいこともあったけれど、今日こうやって最高の景色を作れたことがうれしいです。感謝とはじめましてと、これからもよろしくね!の気持ちを込めて、こういうワンマンをやらせていただきました」。今宵をこう振り返ると、「カントリー・ロード」がラストを飾る。
逃げも隠れもしない2ビートを土台に朗々と編まれていくメロディーは、言わずと知れた名曲のカバーである事実を軽々と飛び越え、地に足を着けて音を鳴らし抜いてきたTRiDENTの6年間を代弁していく。勇壮なリズムとクラップに補強されたアカペラを通過し、走り出すドラム。そこから雪崩れ込んだクライマックスは、間違いなく彼女たちの明日へ繋がっていたに違いない。
こうして6周年のアニバーサリーライブを大団円で終えたTRiDENT。3人の次なる目的地は、この日発表された通り、EP『Yeeet!』を携えて東名阪を巡る『Yeeet! TOUR 2027』だ。ファイナルの舞台は東京・恵比寿LIQUIDROOM。4年前、『D-X』を握りしめて挑んだ会場へ、彼女たちは再び勝負を仕掛けるのである。しかし、名だたるアレンジャーの信頼を勝ち取り、あの頃から何倍にも強く逞しくなったTRiDENTなら不安はないだろう。
なんと言っても、TRiDENTは天下無双であり、無敵になることを表明したのだから。
<公演概要>
TRiDENT 6th Anniversary 『天下無双!無敵の無料ワンマンライブ』
5月5日 東京・Veats Shibuya