尾上菊五郎「とにかく“仕事”が多くて気が抜けない役」 五月大歌舞伎で演じる早野勘平を語る
見ごたえある演目と人気の俳優たちが顔をそろえる五月大歌舞伎。先月にひきつづき三部制で上演される。その第二部は、歌舞伎の演目の中でも傑作中の傑作『仮名手本忠臣蔵』から、清元の舞踊「道行旅路の花聟」、そして六段目「与市兵衛内勘平腹切の場」だ。
『忠臣蔵』の登場人物の中でも、まさに“忠臣”になるために最も苦しみ、劇的な最期を遂げる主人公が、この六段目の早野勘平。五代目尾上菊五郎が組み立てて六代目尾上菊五郎が洗い上げた江戸の音羽屋の勘平を、当代の尾上菊五郎が勤める。初役から約50年、15度目という菊五郎だが、この役を「難役中の難役」と語る。
「まず拵えの段階から大変です。こんなに塗るのかと思うほど、勘平の場合お白粉をたくさん塗らなきゃいけない。
切腹しますから腹にも塗るし腕にも塗るし、脚の付け根まで塗ります。芝居が始まってからは舞台で着替えるところがありますし、鬘も三段階変わりますしね。切腹の後は『色にふけったばっかり』の台詞で、血糊の着いた手を頬になすりつけますでしょう。これが浅葱の衣裳に着いてしまうとなかなか落ちないので気を付けなくてはいけないんです。初めて勤めた頃は衣裳を2~3枚用意してもらっていましたよ」