1954年の創立以来、一貫して「創作劇の上演」を理念に掲げ、同時代の劇作家たちとともに歩むこと65年。劇団青年座に新作を書き下ろしてきた才能豊かな劇作家リストに、また新たな名前が加わることとなった。2001年に旗揚げしたJACROWで脚本・演出を担当する一方で、サラリーマンという一面も持つ“二刀流作家”、中村ノブアキだ。自らの立場を生かした、いわゆる企業ものを得意とする彼が書き、昨夏まで8年間にわたり新国立劇場の演劇芸術監督を務めた宮田慶子が演出する『DNA』が、本日8月16日に東京・シアタートラムで開幕する。
主軸となるのは、子供のいないひと組の夫婦。ふたりは同僚だったが、夫婦は同じ部署で働くことができないという社内の不文律により異動になった妻は、退職して新たな会社を立ち上げる。子供を持つべきかどうかを巡って、家庭では言い争いが絶えない……。
一方、会社に残った夫が働く部署では、一歩間違えば不正ともいえる決算方法が慣習として受け継がれていた。
出世のためと受け入れてきた社員たちだったが、新たに配属された社員がこれに異論を唱え……。
中村が得意とする企業ものとしての部分と、新たな挑戦となる家庭劇としての部分が螺旋状に絡み合う物語で、「次代に繋ぐ」ことの意味を描く意欲作。劇団の創立65周年を彩るのに相応しい舞台となりそうだ。
文:町田麻子