「必ずまた会いに行きます」五感を刺激する没入型ライブ、原因は自分にある。ライブツアー2026『輪廻の箱庭』詳細レポート
(撮影/Hanna Takahashi)
コンセプチュアルな世界観でファンを魅了し続ける原因は自分にある。が3月から4月にかけてライブツアー2026『輪廻の箱庭』を開催した。
今回のライブツアーは、「文学」に着想を得たEP『文芸解体新書』と近い世界観を持っていた印象。公式サイトに書いてあるそれぞれの楽曲にハマる季節と、そんな季節のイメージに相応しい既存楽曲でステージ上には4つの季節を描いた風景が広がっていた。
また、全編生バンドを引き連れてのライブは今回が初。バンドの迫力、圧倒的世界観にも見劣りしない120%のスキルで魅せたツアー初日、3月17日大宮ソニックシティ大ホールでの2部の模様を余すことなくレポートする。
爽やかな夏からスタートした『輪廻の箱庭』
「芽吹き、揺らぎ、やがて還る記憶は再び鳴り始める」――これはツアー『輪廻の箱庭』のツアー日程が記された公式サイトのページに描かれたコンセプトだ。
生き物の命が死後も終わらず形を変えて生まれ変わり続けることを表す輪廻、そして、独自の小さな世界や空間を表現する箱庭。
この2つを使ったタイトルを引っ提げての春ツアーはいったいどんな世界観を見せるのか。
原因は自分にある。が提示する世界観には、人それぞれに解釈が委ねられていることもあり、きっと正解はないのだろうと思いつつも、これから繰り広げられるステージのことを考えている開演前。
観測者(原因は自分にある。のファンネーム)もまた、ペンライトに光りを灯し、これから始まるステージへと備えていた。
そんな中、会場は暗転し、ツアーはいよいよ開幕。パッとステージが照らされると、そこには生バンドと白地に青のペイントが施された衣装を見に待とう原因は自分にある。のメンバー7人の姿が。
直近行われたファンクラブライブでも生バンドを引っ提げた演出を行い、ファンを驚かせたが、1曲目から結果として全曲生バンドだったとは、ある意味で予想を裏切ってきた。
そして歌うは2021年にリリースした楽曲『藍色閃光』。生きることや、命について歌った楽曲はまさに『輪廻の箱庭』というツアータイトルに相応しい。手の動きと一筋の光を連動させた動きが美しく、曲の後半センターで踊る長野凌大の姿には頼もしさを感じた。
ドラマ『親友の「同棲して」に「うん」て言うまで』のオープニング主題歌ともあり、同ドラマに出演していた吉澤要人の挨拶からスタートした『NOW』。この楽曲では、表情の変化を控えめにパフォーマンスしていた『藍色閃光』とはまた違い、笑顔を浮かべ楽しそうに踊るメンバーたちの様子が見られた。途中、ラストのサビ前にある吉澤の「こっち向いて」の決め台詞パートでは、大きな歓声が上がる。
最年少・桜木雅哉が出演したドラマ『修学旅行で仲良くないグループに入りました』のオープニング曲『トレモロ』は、ノートに手書きで書いたような歌詞の映像が流れるという青春感たっぷりなステージに。
曲中、上手と下手に別れて、メンバーたちができるだけ多くの人と目を合わせようとする姿が印象的だった。
ここまで3曲披露したところで、おなじみの自己紹介かつ挨拶が。そして大倉空人が「楽しんでいるかーい!」と大きな声かつハイトーンボイスで呼びかけるハイテンションっぷり。ここまで披露した楽曲3つを紹介する流れで大倉が『NOW』を“今”と日本語に訳して紹介すると、杢代和人からは「あ、あれ『NOW』って書いてナウって読みます」と冷静なツッコミ。それで、この話題は収束かと思いきや、最年長・武藤潤が「『NOW』って書いて“WOW”だと思った!」とさらにテンション高めにボケてみせる。これには、他のメンバーもツッコミながらも、微笑んでみせた。
夏から秋への移り変わりを表現
テンション高めのMCからは打って変わって、しっとりとしたJAZZ風のアレンジで歌ったのは『Foxy Grape』。その雰囲気は、まるでバーにいるかのようなムーディーな感じだったのだがサビ前、小泉光咲のパート〈僕が最後に笑うもんね〉を、いつもよりもロングトーンで歌い切ったのを合図に、バンドの演奏はオリジナルアレンジへとチェンジ。
アレンジver.もオリジナルver.も両方とも楽しめるという贅沢なパフォーマンスを見ることができた。
続いて歌ったのは、EP『文芸解体新書』の特設サイトにある楽曲説明にて「季節:夏」と記されており、灼熱の太陽の下、数々の困難を乗り越えて友のもとへ走る物語、太宰治の『走れメロス』から着想を得た楽曲『疾走』。事前に公開された応援方法の動画で予習した観測者も多いようで、掛け声とパフォーマンスの息がぴったり。これはまた、ゲンジブのライブの盛り上がり曲として定番となっていきそうだなと感じさせた。
そして、ここで夏の風景から葉が色付いて秋へとなっていく様子が映し出されたタイムラプスのような映像が。その間、激しいドラムプレイも行なわれ、改めて生バンドだからこそのベース音の深みを感じる。
そんな幕間映像が終わると、秋の楽曲と紹介されている、夏目漱石の『こころ』から着想を得た『愛無常』へ。悲劇へと向かっていく中で良心の呵責と止められない愛、その中で自責しながら赦しを得ようとする人間の弱さ愚かさ、そして愛らしさを感じさせる、この楽曲を7人はステッキとチェアを用いたパフォーマンスで表現。
オータムカラーのスーツで登場し、先ほどまでとはまた一味違った、大人の魅力で魅せる。
昼の部と夜の部で変わる公演替わり曲は『魔法をかけて』。ブロードウェイのようなネオンで照らされた煌びやかな街を表現した映像の中では、お互いの手を取り合って、体を引き寄せあって踊る7人の姿が。今年7月には7周年を迎える彼らのリリース当初と変わらずあどけない表情に見えた。
ここまでの2曲、大人っぽさからのあどけない表情と来て『ギミギミラブ』では、とにかく楽しげな表情が印象的。曲のイントロ段階で大倉の気合いは十分で「さぁ、みなさん! 一緒に!」と呼びかけ、サビ前には小泉が「皆さん、クラップお願いしまーす!」ともう1段階盛り上げることをリクエストした。
2回目のMCでは、バンドメンバーの紹介があり。桜木による反射神経を試されるかのような独特の声出しタイムも。
「右! 左!」と瞬時に振られる、その合図に観測者が必死についていくというそぶりを見せた後で、ライブは後半戦へと繋がっていった。
一気に駆け抜けていく後半戦
後半1曲目は川谷絵音が作詞・作曲を務めた『パラノイドランデブー』。曲中に散りばめられている〈はい、チーズ〉〈はい、ポーズ〉という歌詞やシャッター音に合わせて、メンバーが決めポーズを取ると会場からは歓声が上がっていた。
印象的なギターソロからスタートする『貴方に溺れて、僕は潤んで。』と生バンドの相性は抜群。妖艶かつ力強い同楽曲のパフォーマンスは、今だからこそ魅せられる大人の魅力がギュッと凝縮。長野が手を前方に伸ばし、吉澤が手を上に挙げてステージは暗転。余韻に浸る間もなく、次の展開へと進んでいく世界観に没頭させるステージ構成はゲンジブらしさ万点。
秋から寒さの厳しい冬の美しさと過酷さの二面性を表現するような映像へと移り変わっていった。そして、黒いファッションや、レザーアイテムなどを取り入れたような冬の装いに身を包んだ7人が登場。披露されたのは狂気の愛を描いた楽曲『Mania』。その世界観を表現するかのように、ステージのライティングは赤を基調としていて、不気味な雰囲気が漂う。メンバー同士で、絡み合う姿もまた単なるパフォーマンスではなく、1つのショーを見ているかのような気持ちにさせられた。そう思わせるのは、曲中で変わっていく7人の表情も影響しているのかもしれない。この公演の2日後に20歳を迎えた桜木が服をはだけさせて全力でパフォーマンス。大人の魅力を増大させていた。
大倉の「よっしゃ、かますか!」という頼もしすぎる掛け声でスタートしたのは『因果応報アンチノミー』。目まぐるしく替わるフォーメーションは、2階席から見た時に縦、横、斜めどの向きに広がっても美しく、圧巻の構成。1人ひとりがスキルフルであるのに加え、チームワークの良さも感じさせるパフォーマンスで魅せた。ちなみに、桜木の決め台詞〈因果応報JUDGE〉では「皆さんご一緒に、因果応報?」と尋ね、会場に〈JUDGE!〉と言わせるエンターテイナーぶり。杢代和人は「おかえり……」というセリフパートを「大宮まだまだ行けんだろ?」と俺様風な言い方で投げかけて、なんとも感情が忙しいステージへとなった。
ノンストップで披露されたのは、遠藤周作の『沈黙』からインスピレーションを受ける『Silence』。江戸時代初期の過酷な時代を生きた宣教師の物語を恋愛に置き換えて歌詞を制作され、神を信じるという崇高な行為と、私たちの日常においての恋愛と通ずる面を描いたような☆Taku Takahashi(m-flo)制作の楽曲だ。サビ前、小泉と武藤の高音パートでの掛け合いは、まるでそんな苦しさやもどかしさを演出するよう。また、2番の〈僕を試す〉で大倉が祈ったかのような表情を魅せるなど、世界観を完全に表現。普段は淡々と歌唱する小泉も大サビ前のパートで振り乱したかのような歌い方で見せ、その姿は、まるで神を信じるという行為の切なく苦しい表情を表しているかのようだった。
テクノハウスリミックスバージョンの『スノウダンス』は、よりメンバーの歌声が響くような印象。さらには曲中、メンバーのダンスブレイクもあり、あらためて7人のスキルを装飾なしで感じるようなひとときが過ぎた。
五感に訴えかける驚きの演出
ここまで映像演出と共にバンドメンバーが演出したビバルディの『四季』も春へ。いよいよ季節は1周巡ったようで、映像はただ単に花が開くというよりも、どこか力強さを秘めたような映像へ。バンドメンバー4人で最後は映像に演奏を付けたことで華を添えた。
そして、どんどんと楽曲が転調していき、黒の衣装にそれぞれのメンバーカラーの花がまとわりつくような衣装を身に纏ったメンバーが登場。EPのリード曲『ニヒリズムプリズム』へと繋いだ。同楽曲は「原因は自分にある。」「因果応報アンチノミー」などゲンジブの代表曲を手掛ける久下真音による梶井基次郎の「蒼穹」を題材とした作品。テレビやミュージックビデオの映像ではわからなかったことだが、サビの〈Me ? me ? 〉では、カメラに抜かれているメンバー以外も笑顔と真顔を瞬時に切り替えるプロっぷり。ゲンジブといえば、表情管理というイメージを、この曲を通して広めていくのではないかと想像させられた。
この日2度目の公演替わり曲は『柘榴』。曲の雰囲気から少しダークなイメージがある柘榴だが、考えてみれば5月下旬〜7月頃という晩春から初夏にかけて咲く花だからこそ、セットリストではこの位置に来たのだろうかと考察する。長野が最後の歌唱パートで、オリジナルのフェイクを入れた姿も目立っていて、いかにこの春ツアーを楽しんでいるかどうかを感じさせた。
雰囲気をガラリと変え、披露したのはゲンジブの春ソングの1つ『桜Ground』。その曲にふさわしく、ステージのライティングは桜色、楽曲はどこかボサノバ風にアレンジされており、会場は優しい雰囲気に包まれる。さらに曲中には、桜の香りが漂い、五感で春を感じさせるという新しい試みも。そして、最後には桜が満開に。桜吹雪に見立てた装飾が降り注いだ。そして、曲の最後にはリーダーの吉澤から「観測者のみんな、今日も素敵な笑顔をありがとう。みんながいてくれるから、俺らはまた必ずみんなのところに会いにいきます。だから待ってて」と挨拶。
これでフィナーレかと思いきや、聞こえてくるは秒針の音。カウントダウンタイマーが表示される中で『無限シニシズム』を歌唱。最後は、秒針が0になり、アンコールなしでステージは閉幕。拍手が送られ、この日のステージは終了した。
そんな中、発表されたのは来る6月と7月にグループ初となるアリーナツアーを開催するとの情報。これには、観測者も大喜び。着実にファンの規模を広げ続ける彼らは、いったいアリーナという大きなステージで、どんなゲンジブらしさを表現してくれるのか。今から楽しみだ。
撮影/Hanna Takahashi
取材・文/於ありさ