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2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】

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2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】


展覧会の中止が相次いだ20年、21年を経て、再び多くの展覧会を見ることができるようになった2022年。さらに2023年もバラエティに富んだ展覧会が続々と開催される予定だ。ここでは、今年注目すべき展覧会のなかから、「日本美術」を中心に「ファッション」「建築」「現代美術」をテーマにした展覧会をピックアップして紹介します。

※新型コロナウイルスの影響などにより、各展覧会の会期等が変更になる可能性があります。詳細は各展覧会の公式HPなどでご確認下さい。


日本美術の分野では、画家の個性が際立つ展覧会が目白押しだ。まず最初に紹介するのは、修繕工事のため23年4月より長期休館に入る三菱一号館美術館で開催される『芳幾・芳年― 国芳門下の2大ライバル』(2月25日〜4月9日、北九州市立美術館7月8日~8月27日)。幕末を代表する浮世絵師、歌川国芳に学んだ兄弟弟子であり、良きライバルだった落合芳幾と月岡芳年。
芳幾は明治に導入された新しいメディア「新聞」を舞台に新聞錦絵を描くようになり、一方の芳年は、国芳から継承した武者絵を展開し、歴史的主題の浮世絵を開拓していった。同展では、30歳前後で明治維新を迎え、“最後の浮世絵師”と呼ばれる世代の二人の作品を紹介しながら、激動の時代に彼らがいかに浮世絵の生き残りを図っていったのか探っていく。

2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】

高橋由一《鮭》重要文化財1877(明治10)年頃東京藝術大学蔵
2022年は「国宝」を特集した展覧会が話題を呼んだが、2023年は「重要文化財」に焦点を当てた展覧会が開催される。東京国立近代美術館の『重要文化財の秘密』(3月17日~5月14日)では、高橋由一の《鮭》や、萬鉄五郎の《裸体美人》など、明治以降に制作され、重要文化財に指定された作品のみで構成される。しかし、重文に指定された作品のなかには発表当時は物議をかもした「問題作」だったものも多かったという。なぜ、問題作は「名品」と呼ばれるようになったのか?作品の魅力とともに、私たちの価値観の変遷にも迫っていく。

2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】

北野恒富《五月雨》1938年、大阪中之島美術館
大阪中之島美術館で開催後、東京へと巡回する『大阪の日本画』(大阪中之島美術館 1月21日〜4月2日、東京ステーションギャラリー 4月15日〜6月11日)は、近代大阪の日本画が会期中150余点も勢ぞろいする史上初の展覧会だ。北野恒富や島成園、菅楯彦や矢野橋村など、50名を超える大阪の画家たちの作品は、伝統や格式にとらわれず、自由でのびのびとした表現のものばかり。
東京とも京都とも異なる、個性的な芸術や文化が育った都市・大阪生まれの日本画の魅力を浮き彫りにしながら、「大阪画壇」についても紐解いていく。

2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】

甲斐荘楠音《幻覚(踊る女)》1920年頃、京都国立近代美術館
一度見たら忘れられない強烈な妖艶さを漂わせる人物画で知られる“京都画壇の異才”甲斐荘楠音(かいのしょうただおと)の実に四半世紀ぶりとなる大回顧展も大きな注目を集めそうだ。『甲斐荘楠音の全貌』(京都国立近代美術館 2月11日〜4月9日、東京ステーションギャラリー 7月1日〜8月27日)では、大正期から昭和期の京都画壇で活躍した、その画業についてのみならず、戦前に映画界へ転身を果たした映画人・演劇人としての甲斐荘についても光を当て紹介。近年発見された甲斐荘が手掛けた時代劇衣裳なども展示し、ジャンルを超えて鮮烈な個性を放ったその生涯を展観する。

2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】

重要文化財《五百羅漢図》吉山明兆筆南北朝時代・至徳3年(1386)京都・東福寺蔵
(中央)第1号幅※展示期間東京会場:3月7日(火)〜3月27日(月)京都会場:10月7日(土)〜10月22日(日)
(右)第20号幅※展示期間東京会場:3月28日(火)〜4月16日(日)京都会場:10月24日(火)〜11月5日(日)
(左)第40号幅※展示期間東京会場:4月18日(火)〜5月7日(日)京都会場:11月21日(火)〜12月3日(日)
毎年、日本各地の古刹の名品を紹介する展覧会が開催されているが、今年は、鎌倉時代前期、円爾(えんに)によって開山され、京都五山のひとつに数えられる禅寺のひとつ、東福寺に注目だ。東京国立博物館で開催される特別展『東福寺』(3月7日~5月7日、京都国立博物館10月7日~12月3日)では、「画聖」とあがめられた絵仏師・明兆(みんちょう)の大作《五百羅漢図(ごひゃくらかんず)》の現存する全47幅を修理後初公開(会期中展示替えあり)するほか、巨大伽藍にふさわしい特大サイズの仏像や書画類の優品など、東福寺の寺宝約200件を紹介。大陸から日本に禅宗文化がどのようにもたらされ、花開いていったのかをじっくりと紐解いていく。そして、「いま」を如実に映し出す、現代アートやファッション、建築の展覧会も忘れてはいけない。


2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】

ヤン・ヘギュ展示風景「ヘギュ・ヤン:コーン・オブ・コンサーン」マニラ現代美術デザイン美術館2020年撮影:アット・マキュランガン※参考図版
『ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会』(森美術館 4月19日〜9月24日)は、知らなかった世界、見たことのなかった世界に触れるきっかけを作る展覧会。物事の見方や観点が複数化した現在、現代アートはもはや「美術」や「図画工作」の枠には収まりきらない存在となっている。この展覧会では、国語・算数・理科・社会などの学校の教科を現代アートの入口に設定。現代アートへの新しいアプローチの仕方も提案してくれる。また、展覧会では、展示作品の約半分が森美術館の収蔵品であることも注目ポイントだ。

2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】


昨年もパリの一流メゾンを紹介する展覧会がいくつか開催されたが、2023年に登場するのは『イヴ・サンローラン展』(国立新美術館 9月20日〜12月11日)だ。イヴ・サンローランはわずか21歳でクリスチャン・ディオール(DIOR)のデザイナーに就任し、その後、自身のブランドを発表。以降「モードの帝王」として君臨し続けた。
彼の没後日本初となる大回顧展では、イヴ・サンローラン自身によるルック110体のほかアクセサリー、ドローイング、写真などを一堂に紹介。ジャンプスーツやサファリルック、そして画家・モンドリアンの作品にインスパイアされたカクテルドレスなど、多様な文化や歴史から刺激を受けながら生み出された彼のクリエイションをたっぷり見られるのが嬉しい。

2023年 話題の展覧会をピックアップ②【日本美術ほか編】

《リトル・アイランド》2021年ニューヨーク撮影:ティモシー・シェンク
建築のジャンルでは、『ヘザウィック・スタジオ展:共感する建築』(東京シティビュー 3月17日〜6月4日)に注目したい。ヘザウィック・スタジオは1994年にロンドンで設立され、世界各地で革新的なプロジェクトを手掛けている今、世界で最も注目されているデザイン集団のひとつだ。2023年竣工予定の「麻布台ヒルズ/低層部」の設計など、日本でも活躍が著しい彼らの展覧会では、《上海万博英国館》や、《グーグル・ベイ・ビュー》など、主要プロジェクト28件を一挙に公開。さらに彼らが手掛け50年ぶりにデザインがリニューアルされたロンドンの2階建てバスの高さ4mを超える原寸大模型(部分)が東京シティビューの吹き抜け空間をいかして展示される予定だ。

この記事で紹介した以外にも、さまざまな展覧会や芸術祭が全国各地で開催される。2023年も展覧会巡りを存分に楽しみたい。


文:浦島茂世

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