【ライブレポート】w.o.d.、切磋琢磨し合えるバンドとの対バン・ツアーをTSUTAYA O-EASTで完遂
Photo:小杉歩
兵庫県出身の3ピースバンドw.o.d.(ダブリューオーディー)が、4都市を巡る対バン・ツアー『w.o.d. presents スペース・インベーダーズ 5.5』を開催。初日の名古屋はSIX LOUNGE、大阪はSPARK!!SOUND!!SHOW!!、札幌はNOT WONKという気鋭バンドたちを迎え開催してきた。
最終公演となった11月11日。この日の対バンは奈良発のAge Factoryだ。会場はコロナ禍のガイドラインが敷かれる中で行われたものの、フロアは観客で埋め尽くされ、多くの人たちが注視する好カードであることを肌で感じた。結論から言うと、こちらの期待値を遥かに上回る激突が繰り広げられたと言っていい。
奈良と言えばLOSTAGEが真っ先に頭に浮かぶが、Age Factoryも先述バンドに倣った気骨に満ちたオルタナティヴ・ロックを鳴らす。とはいえ、どこにも属さず、内面で沸々と燃えるエモーションを吐き出す我が道を行くバンドである。
中盤にはラップを交えた先鋭的な「CLOSE EYE」を放ち、静と動の起伏溢れる展開にはデフトーンズに通じるヘヴィ・ロックの手触りさえも感じた。また、清水エイスケ(Vo/G)はハードコア調のシャウトを決める一方、「自分たちの歩みに誇りを持てたら、そんな気持ちを込めた」と説明した後にプレイした「Merry go Round」では飾らないポップな歌心を披露。ラストは海のない奈良に思いを馳せた「HIGH WAY BEACH」で締め括り、男臭いエモーションで多くの人を酔わせていた。
w.o.d.
そんなAge Factoryのパフォーマンスを受け、w.o.d.はどう闘うのだろうか。恒例SEであるヴァニラ・ファッジによるビートルズのカバー「Ticket To Ride」が流れると、「スコール」で本編はスタート。Ken Mackay(B)の極太ベースを皮切りに、サイトウタクヤ(Vo/G)のサイケなギターが乗り、そこに中島元良(Dr)が切れ味鋭いビートを叩き込むと、会場は早くもw.o.d.色に染められていく。間髪入れずに「楽園」に進むと、赤と青の照明が映える中でバンド・グルーヴはグッと加速度を上げていった。
サイトウタクヤ(Vo/G)
Kenが全体重でベースを刻むような重低音を轟かせると、「Fullface」へ。
サイトウも気迫のこもったシャウトで楽曲の熱量を高め、フロアにはジャンプする人たちが増えていく。前回の恵比寿リキッドルーム公演(2021年6月25日に行われたワンマンツアー・ファイナル公演)同様の爆音祭が眼前に広がっていた。ただ、観客の横っ面をブン殴る轟音だけに止まらず、グラデーション豊かな表現力で沸かせる手腕も彼らは持っている。今回の対バン・ツアーを経て、自分たちの武器や魅力を客観的に見据えることができたのではないかと勝手に推測する。
Ken Mackay(B)
鋭いギター・カッティングが冴える「lala」、レッド・ホット・チリ・ペッパーズの『Mother’s Milk』(邦題:『母乳』)期を彷彿させるグルーヴが心地いい「0」を経て、「THE CHAIR」においては途中から暴走するリズム隊の迫力に圧倒されるばかりであった。3ピースとは思えぬ分厚い演奏でロック・バンドの本領を叩きつけた後、中盤に「煙たい部屋」をプレイ。アコギでも成立するシンプルなメロディを際立たせ、ステージ背面から照りつけるオレンジ色のライトもどこか郷愁を刺激する演出で素晴らしかった。その流れを踏まえ、哀愁漂う歌からバンドインする「relay」の起伏激しい展開にも興奮を抑えられず。
中島元良(Dr)
そして、ここで対バン・ツアーが実現できたことに触れ、「(自分たちが)高校の頃からAge Factoryは有名だった」とサイトウは告白し、今回のツアー4カ所は好きなバンドしか呼んでいないと明言。w.o.d.とAge Factoryはこの日が初・対バンだったらしく、相手へのリスペクトはもちろん、切磋琢磨し合えるバンドとしかやりたくないという意志表明とも汲み取れた。「音楽最高やなと思いまして、ライブ最高やし。それしかないです。また、ライブやるんで、いっぱい遊びましょう!」と今後について述べると、次は10月6日に配信リリースされた新曲「イカロス」をドロップ。ここでも頭蓋骨を揺さぶる骨太ベースを轟かせ、サイトウの色気を帯びたシャウトも耳を引きつけ、フロアは拳を突き上げる人たちで溢れていた。いやあ、文句ナシのかっこ良さだ。後半は「BALACLAVA」、「Mayday」、「1994」と怒涛の勢いで畳み掛け、「ラスト1曲、またね!」と言い残し、「踊る阿呆に見る阿呆」を最後に投下。
間違いなく今日イチと言えるほどフロアを激しく揺さぶり、アンコールなしの約1時間でライブは潔く終了。これにて、リベンジとなる対バン・ツアーを無事に完遂したw.o.d.。
今日のライブを観て、彼らの真骨頂でもある耳をつんざく爆音に加え、メンバー個々のスキルは磨き抜かれ、バンド全体のグルーヴに整合性が出てきたように感じた。ハミ出したキャラの強いメンバーたちが、一枚岩のバンドとしてより高い次元で昇華されることにより、その魅力や武器が倍増している印象を受けたのだ。エッジはより鋭く、メロディはさらに豊かさが増し、楽曲の持つ表情は色鮮やかになっている。こうした進化と成長を確認するためにも、早くまた次回のライブを観てみたい。
Text:荒金良介
Photo:小杉歩
<公演情報>
w.o.d. presents “スペース・インベーダーズ 5.5″
2021年11月11日(木) TSUTAYA O-EAST