KREVA、クレバの日に初開催された『908 ON THE DAY』の全貌を緊急レポート! 感動の余韻をもう一度【オフィシャルレポート】
9月8日(908)は、日本記念日協会正式認定の「クレバの日」。
晴れてメジャーデビュー21周年を迎えたKREVAは、久々となる「クレバの日」当日の有観客ライブとして『908 ON THE DAY 2025』を開催した。月曜日の東京ガーデンシアターということで、大規模ライブの集客についてはKREVA自身も内心ヒヤヒヤした、と告白していたが、いざ蓋を開けてみれば駆けつけたファンたちによって見事フルハウスの盛況ぶりである。
「最後まで油断しないで楽しんで、いや! 全部解放して、ともにクレバの日を祝おうぜ!」と呼びかけながら2時間超を駆け抜けた一夜の模様を、振り返ってみたい。
開演予定時刻の午後7時をまわり、オープニングSEの「908 ON THE DAY THEME」が鳴り響く中にKREBandの面々(白根佳尚/ds・バンマス、大神田智彦/b、熊井吾郎/MPC+DJ、田中義人/g、柿崎洋一郎/key、SONOMI/cho+key)が姿を見せる。滑らかにしてタイトなバンドサウンドで「I Wanna Know You」が奏でられる中、早くも総立ちになったオーディエンスからひときわ大きな喝采を浴び、シックなセットアップ姿のKREVAが登場だ。そこから「トランキライザー」に繋ぐ選曲で、オーディエンスとの心の距離感を推し量るようにパフォーマンスする。ステージを彩る青と赤のガーランドは、『心臓』の頃の印象的な色彩イメージを思い出させるようだ。
「ようこそ908 ON THE DAYへ」とあらためて挨拶しながら、開演時間が少々押したことについて「19時08分、一番KREVAです。最初から決まってたみたいだろ。でも本当にいろいろあって」と謝罪し、アンコールなしで今回のステージを駆け抜けることを宣言する。
記念日の祝祭感にぴったりな「IWAOU」に続いては、超攻撃的なグライム風の「No Limit」、「ストロングスタイル」、ビートに合わせてサングラスを外し音玉も炸裂する「基準」と、激しいレーザー演出が飛び交う中に怒涛のラップ攻勢で会場を沸騰させてしまう。ただし、強烈なラップやサウンドを一方的に浴びせかけるのではなく、オーディエンスとの掛け合いを交えながらインタラクティブな熱狂を育んでゆくところが、KREVAライブの真骨頂と言えるだろう。ちょうど満月(大潮)の夜となった今年のクレバの日の「Under The Moon」の後には、リリック中のメッセージをドラマティックに繋ぐように「Forever Student」や「人生」が披露される。
「人生、何が起こるか分かんねえよな。まさか俺があいつと一緒に曲を作るなんてな! そして、クレバの日にあいつを紹介するなんてな!」とステージに招き入れられたのは、この日のゲストとしてアナウンスされていたMACCHO(OZROSAURUS)だ。
KREVAからのリクエストとして、近年はライブ披露の機会もなかったというOZROSAURUS「VILI VILI」を放ち、そこから物語を繋ぐように「Players’ Player feat. KREVA」がKREBandのサウンドと共に届けられる。両者には、強い緊張感を伴う過去があった(ビーフと言うよりもちょっとしたボタンの掛け違いだったことが既に明かされている)わけだが、ふたりそれぞれのスタイルで言霊を刻みつけた後、MACCHOが「これからの話をしようぜ」と言葉を残してKREVAと笑顔で握手を交わす姿こそが、まさに歴史を経ての現在地という印象で感動的であった。
「クレバの日」を祝福するだけではなく、そこに何度でも特別な意味を見出そうとする「居場所」。リリースから21年後の「音色」。そして「アグレッシ部」というメロディアスなフロウが続く一幕では、この9月8日にちょうど誕生日を迎えたSONOMIに花を持たせる「ひとりじゃないのよ feat. SONOMI」も披露。ともにキャリアを重ねて味わい深さを増してゆく盟友の歌声に、場内を満たすような温かな拍手が贈られる。オーディエンスの笑顔をバースデーケーキのキャンドルに見立て、SONOMIの火を吹き消すような仕草で場内が暗転する演出もナイスだった。
KREVAによるボコーダー演奏を交えて届けられた「Tonight」は、ボコーダーの音色がLEDによる流星のような光で可視化される機材(音程によって色調も変化)を導入。
ロマンチックなメロディが映える視覚演出だ。そしてここ有明では、以前すぐそばの病院にKREVAのお母さんが入院(残念ながら2024年に他界)しており、楽曲制作中に何度も呼び出された記憶を振り返る。「俺がヒイヒイ言いながら曲を作っていても、みんながよろこんでくれるんだったら、それだけでやっていけます」と言葉を添え、「次会う時」を、さらには「Link」を披露するのだった。
『908 ON THE DAY』は、記念日に相応しいパーティーチューンのつるべ打ちでクライマックスへと向かってゆく。「敵がいない国」や「TradeMark」の、すでに20曲を越えてこれか、というラップのキレはどうだろう。狂騒の祭囃子「ラッセーラ」、KREVAのステップとサーチライトのように動く照明がシンクロする「パーティはIZUKO?」、さらに「C’mon, Let’s go」という流れは、KREVAの自由闊達な息遣いとバンドの生の躍動感が相乗効果を生みながら際限なく高揚感をもたらす。華々しいロゴカラーのテープが降り注ぐ中に披露されるのは、最大級の合唱を呼び起こす「Na Na Na」である。
そして、「イッサイガッサイ」から「Expert」という新旧のスタンダード曲でこの日のステージを締め括ろうとするとき、KREVAはオーディエンスにパフォーマンスの撮影・録画を許可した。
数々のメッセージが連なってゆくセットリストと凄まじい勢いで畳み掛けるラップがあった。記憶に刻まれる濃密な対話と祝祭感があった。しかしそれらはすべて、大切な仲間たちと大切な時間を共有することの体現に他ならなかったのである。
最後の最後に紙吹雪舞うステージは、この一夜限りの思い出ではなく、今後それぞれに降りかかる困難もともに乗り越えて行こうとする約束の光景のように感じられていた。
ソロデビュー20周年を経て、新たなステージへと踏み出したKREVA。独立後初の大型ソロ公演──それが『908 ON THE DAY』。常に進化を止めず、新しい挑戦を重ねてきたKREVAならではの圧巻の演出、そしてチケット争奪戦を勝ち抜いた観客たちの熱気がひとつになり、東京ガーデンシアターが希望とエネルギーで震えた一夜。会場にいた人も、オンラインで参加した人も、そのすべてが“前向きになれる”パワーに満ちたステージ・エンタテインメントとなった。
見逃した人も、もう一度味わいたい人も9月11日(木)21:08〜9月15日(月・祝)23:59まで、本公演のアーカイブが配信される。Text:小池宏和Photo:岸田哲平 / 小山美里
<公演概要>
KREVA『908 ON THE DAY 2025』
9月8日 東京ガーデンシアター