水曜日のカンパネラ、リキッドルームがダンスホールと化した新体制初のワンマンライブオフィシャルレポート
撮影:横山マサト
水曜日のカンパネラが2022年8月3日(水)、新体制初のワンマンライブ『水曜日のカンパネラ ワンマンライブ2022 ~Neo poem~』を東京・恵比寿 LIQUIDROOMにて開催した。
2021年9月に初代ボーカリストのコムアイが脱退、2代目ボーカリストとして詩羽の就任が発表。現在は詩羽に加え、サウンドプロデューサーのケンモチヒデフミ、何でも屋のDir.Fと3人で活動しているが、ライブでは詩羽のみがステージ上でパフォーマンスする。
6月22日の神奈川・F.A.D YOKOHAMAを皮切りに、全国8カ所を巡る対バンツアーを経て、満を持して東京でのワンマンライブを迎えることとなった。新体制になって以降、リリースパーティは2回主催しているが、正式なワンマンライブは今回が初。チケットは即日SOLD OUT。プレミアチケットを手に入れることのできた来場者で会場は満員となった。
定刻を過ぎたところで暗転。
「アリス」のイントロが流れると、客席の四隅にうさぎの耳付きの仮面を被った4人が登場。1人ずつスポットライトが当たり、仮面を被った人物が歌い出すが、誰が本物なのかわからず観客たちが戸惑っている中、ステージ上手から赤い衣装に身を包んだ詩羽が登場。そのまま詩羽は、新生・水曜日のカンパネラ初楽曲の1曲「アリス」を軽快に歌い、初ワンマンライブの幕を開けた。
間髪おかず、初期水カン時代中期の楽曲「アラジン」を披露。間奏のタイミングで、詩羽はモップでステージを掃き、ギター代わりに弾き真似をするなど、自由自在にパフォーマンス。ワンマンタイトルの「Neo poem」のレーザーがステージの壁に投射されると、「ラー」へ。特徴的なリズムが流れ、新生カンパネラ、もう1つの始まりの楽曲「バッキンガム」へ。重く響くキックの音に、抜けのいい詩羽のラップと歌声が乗り、ステージ左右をくるくる動き回りながらパフォーマンスした。
「あらためまして、こんにちは! 水曜日のカンパネラの詩羽です!」と自己紹介すると、大きな拍手の中、詩羽はミネラルウォーターをこの上なく美味しそうに飲んだ。「この景色を見てうるっときちゃった。一応リリースパーティは1人でライブをしていたけど、今までは言ってなかったから、今回が正式に初ワンマンライブ(笑)!」と語り、「最後まで楽しんでいきたいと思っているので、次の曲、みんなで一緒に手をあげてほしいです」と、銭湯を歌詞のモチーフにした「ディアブロ」へ。《いい湯だねいい湯だね》という歌詞に合わせ、観客は手で湯気を作ったりしてコール&レスポンス。一体感を生み出した。
重い四つ打ちのキックとベース、スロウなテンポにソウルフルなメロディが乗る新曲「ティンカーベル」をしっとりと歌い上げると、会場が真っ暗に。コムアイ時代の楽曲「メデューサ」のイントロが流れると、光る電飾のマントを纏った詩羽が客席の中を歌いながら練り歩いていく。客席中央のPA卓前までたどり着くと、突然現れた脚立に座り、「モヤイ」を歌唱。
原始的なリズムとストリングスとコーラス、そして観客たちの拳があがり、詩羽を中心にこの上ない多幸感を生み出した。
楽曲が終わり、再び真っ暗になると、お祭りの音が鳴り、うさぎの耳の仮面を被った4人の従者が提灯を持って会場を練り歩いていく。4人はステージに張られた暗幕の中に姿を消す。しばらくして暗幕が開くと、竹藪に覆われたセットが現れた。十二単衣のような衣装に身を纏い、鎮座している詩羽が、「かぐや姫」をしっとりと歌った。
セットから降りて、羽織っていた衣装を脱ぎ、別の衣装に身を包んだ詩羽が登場。再び、水を美味しそうに飲みながら、この日のチケットが売れるか心配だったことを明かした。同時に、リキッドでワンマンできていることに対して「もうすぐ活動1年くらいの20歳が、リキッドルームで、みんなと楽しく踊るのが可能な世の中なんです。
私はやりたいことをやって、自分を曲げず、運やご縁があってここにいるんですけど、意思を貫いていたらどこかのタイミングで縁があるのかなって。好きなものは好きなときに見に行って、タイミングやご縁、運命的なものを逃さないで、みんなと一緒に駆け抜けていきたいな」と話した。
「いい話をしたところで、次の曲にいきたいなと思うんですけど」と笑いをとると、観客たちにスマホのライトを灯すように伝え、会場に天の川が生みだした。ギャルでパリピな織姫と彦星を描いた「織姫」を披露し、観客たちの手拍子とともに水カン流EDM楽曲「卑弥呼」へ。さらに、本日2曲目の新曲を披露。曲の途中で、5人のカメラマンたちが詩羽を囲むようにステージに現れると詩羽は退場。激しいエレクトロサウンドの中、5人は横並びになって、前後に動きながら客席を撮影した。
突然、白衣を着た人物たちが現れ、蓄音機やデスクトップPCを準備すると、「エジソン」のMVと同じセットがステージ上に出現。
TikTokやSNSでも広がっていることもあり、スマホを取り出し撮影を始める観客も少なくなかったが、こらえきれなくなったのか、楽曲後半ではスマホをしまい、みな身体を揺らし、リキッドルームはダンスホールへと化した。
ラブの多い世の中でいようぜ!
再びおいしそうに水を飲みながら「楽しい! 楽しい!」と語った詩羽は、MCをした。
「私が活動をはじめた1年前からコロナ禍で、ずっと、みんなの顔が半分しか見えない状態でライブをしているので、伝わるけど伝わらないところもたくさんあるんです。だから、手拍子だったり、手を向けてくれるだけで熱量が伝わるのがうれしくて。なかなか難しい時期ではあると思うけど、これが終わったらもっといけるんじゃないかと思っていて。初ワンマン。一度しかない響きだし、今日このステージに立ってライブをやるのは本当に1回なので。2022年8月3日、水曜日のカンパネラのワンマンあったなくらいで覚えておいてもらって、ラブでいてくれる期間はみんなのラブを私に分け続けてほしいです。
私も与え続けたいと思っています。みんなに、ラブの多い世の中でいようぜ!って伝えていけたらと思います」
自分の気持ちを言葉にすると、「もうすぐ終わりだから、最後まで楽しんでいきたいなと思っているんですけど、楽しむ準備できていますか? 最後まで手をあげたり、ジャンプしたり、ルールを守って筋肉痛になるくらい全力で楽しんでもらえたらと思うので、最後までよろしくおねがいします!」と、水曜日のカンパネラの代表曲「桃太郎」へ。腰に響く低音と、卓球の三角打法をモチーフにした「きびだーん」の振り付け、ナンセンスな歌詞が一体となり、時代を超えて「桃太郎」の持つ魅力が伝わってくる。いつもはウォーターボールに入って歌うことが多いが、この日は、ストレートに「桃太郎」を表現してみせた。
突然詩羽が連結人形をつけると、スロウなデジタルファンク曲「一寸法師」へ。人形たちも詩羽の動きに合わせて、ジャンプをしたり、体を揺らしてダンスをした。楽曲が終わると、人形を脱ぎ、「招き猫」へ。ステージ上には風船型の巨大招き猫が登場。
初代水カンから受け継がれる伝統的演出のひとつで、新生カンパネラでも初期から使われている招き猫を愛ながら、しっとりと歌い上げた。2番のサビでは金色のテープがステージ左右から客席に向かって舞い、招き猫による縁起の良さをこれでもかと見せつけた。
「ありがとうございました! ビッグラブ! バイバイ」
同楽曲を歌い終えると、詩羽は颯爽とステージを後にした。
リキッドルームでの初ワンマン。しかも「エジソン」が大きなバズを起こして注目を集めている中でのワンマン。高いハードルの中開催された初ワンマンだったが、その期待をはるかに上回るライブパフォーマンスだったことは間違いない。新生・水曜日のカンパネラのエンターテインメントはまだまだ進化していきそうだ。
取材・文:西澤裕郎撮影:横山マサト
<公演情報>
水曜日のカンパネラ ワンマンライブ2022 ~Neo poem~
8月3日(水) 東京・恵比寿 LIQUIDROOM