Ku:ui、初自主企画で未音源化の新曲を連発!盟友たちと共鳴した「ここから始まる」決意の夜をレポート
Photo: Riku Kurosaki
Text:蜂須賀ちなみ
Photo(Ku:ui ): Riku Kurosaki / Photo(BILLY BOO):うえむらすばる
Ku:uiが初の自主企画ライブ『Ku:ui presents LIVE "Buddy"』を3月4日 東京・Spotify O-nestで開催した。
Ku:uiは、2025年12月に解散したバンド・シズクノメのボーカリストの西野駿壱が立ち上げたソロプロジェクト。活動開始から2カ月半で実現した今回のライブでは、DeNeelとBILLY BOOを迎えた。シズクノメ時代に対バン経験もある盟友たちだ。
最初に登場したのはBILLY BOO。骨太なバンドサウンドとヒップホップ/EDM/R&B由来のリズムセンスが持ち味の彼らは、「Fake Lover」「Shake it!!」「Dejavu」といったダンサブルな楽曲を続けて披露。観客の身体を心地よく揺らしながら、「全員でいくぞ!」と熱く投げかけ、フロアの温度を引き上げた。あっという間に盛り上がっていく光景を見て、今回の顔合わせの必然性を感じた。
「少しずつ暖かくなってきたので、春っぽい曲を届けます」と紹介された「ラブソング」を経てMC。KAZUKI UJIIE(vo)が「実は、Ku:uiの本当の初ライブを奪ったのは僕たちなんです」といたずらっぽく笑っていたのは、その言葉通り、今年1月に開催されたBILLY BOOのツアー広島公演にKu:uiが出演しているから。バンド名を決めるとき、BILLY BOOではなく、BILLY BUDDYという案も上がっていたという秘話も明かしつつ、「トップバッター、しっかり盛り上げていきますので、よろしくお願いします!」と宣言した。
「みんなでKu:uiに最高の景色を見せてあげましょう!」とその後もフロアを揺らし続けたBILLY BOO。ラストに届けたのは、今年2月にリリースしたばかりの最新曲「トラボジマ」だ。「初めての人でも楽しめる曲です。めっちゃ簡単です。全員その場で、跳べ―!」というKAZUKIの叫びとともに、4つ打ちのビートに貫かれたキャッチーな楽曲が放たれると、観客の身体も自然と動き出す。
フロアではミラーボールが回り、大きな幸福感に包まれた。彼らは「今日は楽しんでいきましょう!Ku:ui、ありがとう!」という言葉を残し、爽やかにフロアをあとにした。
続いては、DeNeelのステージ。のっけからスラップベースが火を噴く「ライムライト」で、観客を瞬時に惹き込んでみせた。「調子どうですか?俺たちと遊びましょう!」と観客に伝えた中野エイト(vo)は、早くもフロアが盛り上がっていることを受けて「ナイスBuddyです」と微笑む。五線譜上をわんぱくに動き回る各楽器の旋律、それらが合わさったときの圧倒的な熱量が、観客を何度でも熱くさせる。
MCでは「Ku:uiって、”u” が多くてどこまで伸ばしていいかわからへんな」といったユーモアで観客を笑わせながら、「Ku:uiのために、ここにいる全員のために、めちゃくちゃカッコいいライブをやっていくので、よろしくお願いします!」と力強く語った。
ライブ終盤では、中野が「最後だと思ってた人が、最後じゃなくてうれしいです」と思いの丈を語る場面も。
どんなバンドも永遠には続かない。これまでにいくつもの背中を見送ってきたからこそ、ステージ上でKu:uiと再会できたのが本当にうれしかったのだろう。きっと、中野と同じことをKu:uiのファンも思っている。演奏再開の合図として、ドラムのビートが鳴り始めると、誰に促されるでもなく観客が自ら手拍子をし始めた。これには中野も「いいね!」と笑顔。「クレイジーレイジー」「存在A」「ゲシュタルト」による盛り上がりを経て、ラストに届けられたのは「カナリア」。<馬鹿馬鹿しいほどの愛を歌うよ>という歌詞通り、照れも遠慮もなく、ただまっすぐに愛を叫ぶような音楽でフロアをまるごと抱きしめた。
イベントのラストを飾ったのは、主催のKu:uiだ。
活動開始からこの日までにリリースした楽曲は2曲のみ。この日は、まだ音源化されていない新曲をふんだんに盛り込んだセットリストを披露し、全10曲でファンを驚かせた。
先に姿を見せたバンドメンバーが音を合わせるなか、「初めまして、東京。Ku:uiです。楽しんでこうぜ!」とKu:uiが登場。1曲目の「壊楽」が始まった。今年1月に2ndデジタル・シングルとしてリリースされた楽曲。待ちわびたファンの感情を一気に解き放つようなスリリングなナンバーで、観客は飛び跳ねたり、手のひらをかざしてリズムをとったりと、楽曲の展開に身を委ねながら、自由にノッていた。
Ku:uiは早速お立ち台に上がり、至近距離で観客と顔を突き合わせながら、ライブならではのコミュニケーションを楽しんでいた。
次に届けられたのは「SCANDAL」。バンド時代から歌い続けている楽曲だが、<また振り出しに戻って 1から始めようか>という歌い出しは、シズクノメの歴史も背負って歩み始めたKu:uiの現在と重なる。Ku:uiが煽らずとも「ヘイ!」と声を上げる観客も頼もしく、Ku:uiとファンの絆を感じさせた場面だった。
最初のMCでは、ゲストの2組への感謝とともに「『Ku:uiのライブならよろこんで』と返事をくれたこと、一生忘れないです。自慢のBuddyです」と語り、「この恩は音で返します」と宣言したKu:ui。その後待っていたのは、未音源化曲を連続で披露する怒涛のターンだった。
3曲目に届けられた「チューニング・ラブ」は、粘度のあるグルーヴが心地よいミドルナンバー。
想いのすれ違いを周波数のズレに喩える歌詞には、ミュージシャンらしい発想が光る。続く「蝉時雨」は、陽炎のように揺らめきながらもジリジリと残り続ける想いを歌った楽曲だ。「誰かを思うと時間の感覚がバグる瞬間ってあると思うんです。触れられないけど大事にしたい瞬間を、一枚のラブレターみたいに閉じ込めた曲を」——そんな紹介とともに届けられた「emma」は、<会えない>と歌いながらも曲調は軽やかだ。ピアノポップ調のサウンドに誘われて、観客も自然と手拍子を合わせていた。
バラード「かぐや」では、繊細なファルセットから芯から響くような低音域まで、その広い音域を豊かに歌い上げるKu:uiのボーカリストとしての魅力をダイレクトに堪能できた。活動開始からまだ間もないにもかかわらず、多彩な楽曲が次々と生まれるのは、受け取ってくれる人がいるからこそだろう。その確信が、7曲目「モノクローム」の<とびきりのメロディを君に届けたいの>という歌詞をフロアを指差しながら歌う姿に滲んでいた。
<次は何色だろう>という言葉は、次なる音楽への期待へと自然に変換された。
ライブ終盤で披露されたのは、昨年12月に発表したデビュー曲「クズボシ」。Ku:uiはファンに「あなたとともにこのアンセムを響かせたいです。一緒に響かせてくれますか、東京!」と語りかけ、この曲を歌い始めた。<嗚呼 僕は誰でもなかった>という言葉が、疾走感溢れるサウンドに乗せて堂々と放たれる。後悔を嘆くのではなく、あえて高らかに歌い上げることで、“だからこそ今から何者にでもなれる”という思考の転換が生まれる。観客はジャンプし、拳を上げ、タオルを振りながらKu:uiの歌を受け止めた。その熱狂のなかで<キミに届いた声だけが 僕の隠してた顔なんだろう>という歌詞が響く。目の前で笑い、叫び、体を揺らす人たちの存在が、Ku:uiの本当の声を引き出し、本当の音楽を立ち上がらせる——ライブという場で、その構図がまさに体現されていた。
「天使のL/O」「sleep?¿」と未音源化曲を連続で届け、駆け抜けるようにライブを終えたKu:ui。バンドサウンドの厚みを突き抜けるようにKu:uiのロングトーンが響くと、ステージからフロアへと光が溢れた。その光に向かって、観客たちが手を伸ばす。Ku:uiもまた、自分にとっての光である彼らへと手を差し伸べる。この日のライブのタイトルは『Buddy』。対バンの2組だけではなく、ここに集まったファンもまた、Ku:uiにとってのBuddyだったのだと、その光景が静かに物語っていた。光を掴もうと伸ばした手は、誰かの背中をさする優しさにもなる。掌を重ねられる仲間たちとともに、Ku:uiの冒険はここから始まる。
<公演概要>
Ku:ui presents LIVE 『Buddy』
2026年3月4日東京・渋谷Spotify O-nest