庭劇団ペニノの初期作『笑顔の砦』をタニノクロウがリメイク
撮影:堀川高志
舞台は日本海側の漁港町にある木造アパート。漁師仲間が集い酒を酌み交わすとき、その隣室には、痴呆の進む老母の介護に明け暮れる中年男とその娘の姿がある……。隣りあいながらも重なることのない二つの部屋の日常を、ハイパーリアルな美術と淡々とした語り口で鮮やかに印象づける、庭劇団ペニノ『笑顔の砦』(2006年初演)。そのリクリエーション版が昨年11月の大阪に引き続き、横浜のKAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオで9月19日に幕を開ける。
今公演は2016年に大阪で上演された『ダークマスター』(2003年初演)で出会った、関西のキャスト、スタッフとの協同作業によるもの。同じ座組でこの2作を続けて取り組むことは、主宰のタニノクロウの十数年越しのアイデアの実現でもあるという。
「ペニノには所属する役者がいないんですけど、この作品をつくった当時はちょっと“劇団みたいなことをやってみたい”とも思っていて。直前に再演していた『ダークマスター』とまったく同じ座組で、内容が表裏になっているようなものをやろうと考えたんです。
『ダークマスター』はブラックファンタジーで、『笑顔の砦』は人情話。あっちが上階と下階の支配の関係ならこっちは隣り合う部屋の関係で、出てくる食べ物も向こうは洋食でこっちは和食、みたいな。