限界を無視する尋常じゃない爆裂炸裂暴走ライブを3時間超えでぶっ続けたレピッシュ 、ちなみに今年還暦だ!【ライブレポート】
Photo:緒車寿一
LÄ-PPISCH(レピッシュ)。PUNK、SKA、ニューウェーヴ、サイケ、ファンク、HIPHOPなど、ありとあらゆるロックを取り込んでかつドッカンドッカンに炸裂させる、日本で初めてミクスチャーロックを確立させたバンドである。オリジナリティーという言葉の遥かに上をいくインパクトに溢れた衝撃的なサウンドと、暴虐の限りを尽くすエネルギッシュ極まりないそのステージングは、彼らの最も大きな、比類なき武器である。
今年35周年を迎えたクラブチッタ川崎は、そのLÄ-PPISCHが1987年のデビュー以来、大切なライブをたくさん披露してきた思い出深い場所だ。なにせLÄ-PPISCHがチッタでライブをやると、いつ何時も常に超満員。しかも初期の旧チッタ時代では、観客が跳ねたり暴れたりしすぎるせいで近隣の麻雀屋さんの牌が倒れるどころかお寿司屋さんの寿司まで倒れたという伝説まである始末(ちなみにチッタは2002年に移築し、地盤に深く杭を打って揺れ対策もバッチリな箱となった)。
MAGUMI(Vo&Tp)
そのLÄ-PPISCHが、2015年以来約8年ぶりにチッタに帰ってきた。メンバーはMAGUMI(Vo&Tp)、杉本恭一(Gt&Vo)、tatsu(Ba)のオリジナルメンバーに、お馴染みのサポートメンバー増井朗人(Tb&Per)、矢野一成(Ds)、奥野真哉(Key&Sax)の計6名。
そして”動”というタイトルを掲げてのライブである。
tatsu(Ba)
LÄ-PPISCHのオリジナルメンバーは現在それぞれ自分のバンドを持っており、各々での活動がメインだが、しかし2008年に逝去した上田現(Key&Sax)といつまでも共にあるべく、LÄ-PPISCHとしてのライブ活動も続けていた。ただ、そんな中でのパンデミックである。ここ数年のLÄ-PPISCHとしての活動は、ライブハウスでは何度か実現したものの人数的にかなり限定されたものにならざるをえず、彼らを見たい行きたいと望むファンの方々も長いこと焦らされていたのではないかと思う。でも、“動”だ。つまり、LÄ-PPISCHが遂に動いたのだ!
杉本恭一(Gt&Vo)
ソールドアウトが一目で分かる人がみっちみちに詰まったフロアでは、期待に胸を膨らませる観客のボルテージがもわもわと立ち上っている。そして遂に登場したLÄ-PPISCHの1曲目は、デビュー前のインディーズ時代からずっとやってる「美代ちゃんの×××」、その印象的なドカバスドラムが鳴り響いた瞬間に沸騰する超満員の観客からの大歓声。素晴らしいオープニングだが、ここからもう終始一貫してずっと凄かった。
なにしろめちゃくちゃ速かったりラウドだったりアグレッシブだったりの超攻撃的ナンバー連発連打状態だったのだ。
矢野一成(Ds)
2曲目はダーク&ラウドの「サイクリング」、3曲目「F5」は奥野がSaxを抱えて前方突入する姿に現ちゃんの姿が重なる(思えば奥野が初めてサポート加入した10数年前、上田現に敬意を表してそれまで触ったこともなかったSaxを吹くことを決心して特訓してライブに臨んだことを思い出したが、あの時もチッタだった!)爆速ナンバー。そしてスタイリッシュクールナンバー「タンポポ」からのtatsuの珍しいお茶目を挟んで「楽園」、さらに「MAD GIRLS」「GOOD DOG」のスカナンバーを立て続ける。
増井朗人(Tb&Per)
奥野真哉(Key&Sax)
MCでは、あと数日で還暦を迎えるMAGUMIのお誕生日について(ちなみにMAGUMIが大体秋分の日、杉本が大体春分の日)、ライブ前日に決まったタイガースのアレにまつわるアレコレで爆笑を誘い、「柘榴」では現ちゃんとのなんじゃそりゃなエピソードも披露しつつ。「miracle」「東京ドッカーン」「胡蝶の夢」「リックサック」「プレゼント」と怒涛のヒットパレードが続くアプローチに、「これは本当に60歳目前のライブなんだろうか?」と大喜びしながらも目を疑う。
さらに後半3曲は六甲おろしからの「VIRUS PANIC」、LÄ-PPISCH随一のハードコアナンバー「LOVE SONGS」(名物・MAGUMIの人間スイミング付)、中期の代表曲にしてハードファンクの大傑作「Magic Blue Case」と、史上最強に容赦ないバーストナンバーが続く中、「む、無茶過ぎるのでは?」と思わず突っ込む20曲があっという間に過ぎ去る。
で、ここで本編終了のはずだったのだが、この流れでお客さんの興奮が収まるわけはないので、もちろん凄まじいアンコールが掛かるのだが、我に返った私は少し心配になった。
そもそも増井氏は大手術からの復帰ライブなのにキツ過ぎる気がする。
速いのはもちろん変則ビートの嵐を叩き続ける矢野氏も物理的にキツ過ぎる気がする。いつもクールなtatsuが今日は余裕が感じられないたぶんキツイんだと思う。奥野は椅子に上ってグラグラしながら弾くとか奇矯な鍵盤演奏が最高だったがSaxは音出なくなってきた絶対にキツイはず。そして意地でもキツそうな素振りは見せずにTpの音がどんどんヨレていくMAGUMI、実はこの男が自分で選曲組みました自分で自分の首を絞めていくスタイル!メンバー中唯一後半まで激しく動きまくり&コーラスも大迫力だった杉本はたぶん人間じゃないんじゃなかろうか、怪獣かな。
アンコールでは「HARD LIFE」「CONTROL」「ANIMAL BEAT」、ダブルアンコールで「パヤパヤ」「KUMAMOTO」を披露し、最後まで爆裂し続けるLÄ-PPISCH。凄まじい限りの3時間超えライブは、LÄ-PPISCHの初期曲、代表曲、人気曲、バースト曲のてんこ盛りの、この上なくゴージャスで神がかった一夜だった。
全開で動きはじめたLÄ-PPISCH、来年は東名阪ツアーを予定だ!
Text:中込智子Photo:緒車寿一
<公演情報>
CLUB CITTA’ 35th Anniversary レピッシュ ~動~
2023年9月15日(金) CLUB CITTA’