『野島康三と斎藤与里―美を掴む手、美を興す眼』埼玉県立近代美術館で 日本近代の写真史、美術史に足跡を残したふたりの作家を紹介
2025年11月1日(土)より、埼玉県立近代美術館では『野島康三と斎藤与里―美を掴む手、美を興す眼』を開催する。評論や展覧会、出版などの活動を通して同時代の美術を支えた埼玉県ゆかりのふたりの作家の視点から、日本の近代美術の一側面を紹介する、同館単独開催の企画展だ。
写真家・野島康三(1889-1964)は埼玉県・浦和の銀行家の長男として生まれ、慶應義塾在学中に写真を始めた。卒業後は東京で写真館を経営しながら、独自の写真表現を追求。新興の写真家として活動するとともに、展覧会や出版の仕事も手がけて同時代の美術や美術家を支援した。
野島康三《S氏肖像》1921年ガム・プリント京都国立近代美術館蔵
洋画家・斎藤与里(1885-1959)は、埼玉県・加須に生まれた。京都で洋画を学んだ後にフランスに留学し、帰国後は『白樺』や『早稲田文学』などに、自身の感覚や感情を重視する新しい傾向の芸術思潮を紹介。自らもヒュウザン会や日本美術家協会の結成を主導して、フォービスムやポスト印象主義などを咀嚼した作品を発表、文展でも活躍した。
斎藤与里《朝》1915年油彩、カンヴァス埼玉県立近代美術館蔵
野島と斎藤の交友は、大正初期から始まっていたと考えられるが、その結びつきが深まったのは、大正8年(1919)、野島が神田に画廊・兜屋画堂を開設した頃である。斎藤は画家の推薦や展覧会のディレクションなどで野島に協力し、ふたりは、最先端の美術の動向を世に紹介するだけなく、美術家たちの交流や支援の場となる理想の展示空間をつくりあげた。
同展では、日本近代の写真史と美術史に足跡を残した野島康三と斎藤与里の活動を代表的な作品や資料を通して紹介すると同時に、彼らが画廊の経営者や評論家として同時代の美術に向けた眼差しについても検証。ふたりが関わった岸田劉生、萬鉄五郎、関根正二など関連作家の作品や資料も紹介する。
埼玉県ゆかりのふたりの活動を通して、近代の日本美術を見直す貴重な機会となるに違いない。
<開催概要>
『野島康三と斎藤与里―美を掴む手、美を興す眼』
会期:2025年11月1日(土)~2026年1月18日(日)※一部展示替えあり
会場:埼玉県立近代美術館
時間:10:00~17:30(展示室への入場は17:00まで)
休館日:月曜(11月3日、11月24日、1月12日は開館)、12月30日(火)~1月3日(土)
料金:一般1,400円、大高1,120円
公式サイト: https://pref.spec.ed.jp/momas/