2024年3月21日 17:00
物語とリアリティの間へ。『オッペンハイマー』でノーランが見せるIMAXの新たな可能性
映画の世界と観客との間にいかなる障害もないこと、モノクロ映像以外、様式化されたところのない映像だった。特にカラー映像の場面は飾り気がなくシンプルな映像を望んだ。できるだけ自然で、世界の肌触りを伝えてくれるようなものだ」
と語る。
上記の作品をはじめ『007 スペクター』や『NOPE/ノープ』なども手がけるホイテマは、現代の映画界に欠かすことのできない撮影監督で、作品ごとに新たな手法、新たなルックに挑み続けている。本作で彼はIMAXカメラを用いて、人間ドラマを微細に描き出すことに挑んだ。
「IMAXは、普通はスペクタクル用のフォーマットで、広い視野、壮大さを伝えるために使われます。撮影の最初から私の関心はクローズアップでも同じように力強いのかどうかにありました。我々は心理を撮影できるのだろうか?これを親密なメディアにできるのだろうか?これはいわば“口元に大金をかける映画”でした。
物語がそれを要求したのです」
ノーラン監督は本作の映像は、観客が「物語とリアリティの中に入り込むことができる」ものだと宣言する。
「『オッペンハイマー』は大きな射程、スケール、視野を持つ映画だが、一方で私は観客にすべてが起こった部屋の中にいるように感じてもらいたかった。