劇団ONEOR8の2年ぶりの新作公演『誕生の日』がまもなく開幕する。外部プロデュース公演でも脚本、演出などで目覚ましい活躍を見せている劇作家、演出家の田村孝裕が、「評価を直に感じるので、一番緊張する」と語るホームグラウンドでの、久々の書き下ろしである。ささやかな日常を懸命に生きる人間の感情の揺らぐ様を、鋭く、温かく見つめ、繊細に描き出してきた田村が、新たな主人公としたのは40歳を目前にした独身女性。この設定だけで同世代の女性たちの共感を誘う田村の世界が炸裂しそう……と期待を募らせていたところ、そこには思いもかけない、これまでの田村のアプローチとは確かに違う驚きの仕掛けがあった。挑戦のきっかけは、危機感だ。
「当たり前ではあるけど、いつまでも若手とは言っていられない。自分たちの芝居を古いと自覚して芝居を作っていかなくては、このままではヤバいぞと(笑)。古いというか、自分が面白いと思っているものと、世の中で評価されたり、面白いとされているものがだんだん違ってきていると感じているんですよね。
“劇団力”といったものをつけていかないと、どんどん取り残されてしまう。一昨年に劇団創立20周年を迎えて、今回はリスタートの気持ちでやろうよ、と」