尾上右近が語る『ライオン・キング:ムファサ』「吹替えのお仕事は歌舞伎と似ている」
オーディションを経て、右近が主人公を演じることになったが、ムファサといえば、『ライオン・キング』に登場する誰もが慕い、憧れる王だ。日本版での大和田伸也の名演はいまも愛され続けている。
「ですから、最初に大和田さんにお会いできたのは本当にありがたかったです。その想いを引き継ぐ気持ちになりましたし、大和田さんという大きな存在の実感をつかめないまま演じるのではなく、お会いできたことで大和田さんという存在をちゃんと実感できた。
そうなるとプレッシャーは感じなくなるんです」
とはいえ、本作に登場するムファサは、大和田が演じた威厳のある王ではない。右近が演じるムファサはまだ若く、兄弟の絆で結ばれたライオンのタカと行動を共にしている。幼い頃に両親とはなればなれになり、タカたちの群れに身を寄せるも、どこか孤独や故郷への想いが消えない若きムファサの姿は新鮮だ。「初めての役を演じる時、初めての体験をする時に悩むこともあるわけですが、歌舞伎の世界にはかつて僕と同じ体験をした方、僕と同じように“初めて”を体験した方がたくさんいて、そういう方の姿を見たり、お話を聞いたりすると『ああ、誰もが初めての時は自分と同じだったんだな。