フラカン、5年ぶり8回目の日比谷野音公演をレポート!「来年2023年、僕たち34周年、そして54歳! なんと波平と同い歳!」
Photo:CHIYORI
2022年9月23日(秋分の日)、フラワーカンパニーズが日比谷野外大音楽堂で「フラワーカンパニーズワンマンライブ『ゾロ目だョ全員集合!〜フラカン33年、野音99年〜』」を行った。
フラカンが日比谷野音でワンマンライブをやるのは、通算8回目で5年ぶり。日比谷野音はフラカンの歴史にとって、ある意味日本武道館以上に重要な会場であり100周年である来年=2023年が終わったら大規模な改修工事に入るため、数年間クローズすることが発表されているので、今回はさらに特別な日である、と言える。
秋分の日から始まる3連休の初日のこの日は、台風から変化した温帯低気圧が関東一帯を覆っており、開演時刻の17時の20分前から雨が降り始めた。が、その後、本編19曲・アンコール3曲の全22曲が終了した19時47分まで、雨具を脱げるほど弱まりはしないが、ここにいるのがつらいほど強くはならない、という按配の、空模様が続いた。後半のMCで竹安堅一が触れていたように、曲が終わるたびに、あたりが虫の音で満たされる。
9月7日にニュー・アルバム『ネイキッド!』がリリースされたばかりだが、そのリリース・ツアーは11月から、ということもあってか、同作からプレイされたのは2曲目の「行ってきまーす」と8曲目の「借りもの競走」の2曲のみ。
その代わりに、というわけでもないだろうが、過去のさまざまな時期から、よくライブでやる曲も、レアな曲も、幅広く披露された。
おなじみのSEが鳴って4人が登場、それが止まると同時に鈴木圭介が吹き始めたハープの音で、会場全体がザワッと少しだけ湧く(この時だけです。基本、お客さんみんな、ちゃんと声出しNGのルールを守っておられました)。名古屋のアマチュア時代から存在する初期の名曲「夢の列車」を1曲目に持ってくる、というまさかのスタートだったのだ。
近年、この曲をやる時は、中盤で竹安堅一が、数分間にわたる長尺のギター・ソロを弾くのが恒例だが、1曲目にしたせいか、この日のソロは短めだった。また、鈴木圭介は「どうぞまわりをご覧なれ 魚目のバカヅラだ」のところを、「最高の馬鹿野郎だ」と変えて歌った。変えなくてもいいのに、とも思ったが、気持ちはわかる。
それ以降も、4曲目の「モンキー」や5曲目の「ヒコーキ雲」など、近年はライブでやることが少ない曲が、随所にはさまっていく。個人的にもっともグッときたのは、「ロックンロールバンド」「東京ルー・リード」「人間の爆発」「深夜高速」「こちら東京」「少年」が続いた、中盤の9曲目〜14曲目。
それぞれの時代のフラカンを思い出させる曲を、今のフラカンでしかできない演奏と歌で形にしていく。近年の曲は「こちら東京」だけなのに、今のフラカンの魅力がもっとも濃く表れた時間だったように感じた。
ちなみに、「少年」も、今ライブで歌われるのは、レアな曲である。メジャーから転落してトラッシュレコードから出した一発目『吐きたくなるほど愛されたい』(2002年)の収録曲。という時期からも、歌詞の内容からも、その頃生まれたばかりだった(でも即離婚で離れ離れになった)息子に捧げた曲である、と思われる。
鈴木圭介
そして。個人的にもっとも驚いたのは、その後、MCを経て、グレートマエカワの「フラカン33年、野音99年、友達100万人!」という雄叫びから始まった「友達100万人」だった。意外すぎて、久々すぎて……いや、下手したらライブで聴いたの初めてかもしれない。
なもんで、どのアルバムに入っているのか思い出せなかった。あとで調べたら、トラッシュレコード時代の2006年3月に出たシングル『はじまりのシーン』のカップリング曲で、アルバム未収録だった。蛇足だが、この曲の冒頭の「ミリオンミリオン!」という掛け声の元ネタは、ARBの「ユニオン・ロッカー」だと思います。
あと、鈴木圭介、「来年2023年、僕たち34周年、そして54歳! なんと波平と同い歳!」と叫んで、拍手を浴びたりもした。「よく保ったもんだねえ」と続ける圭介に、「いや、俺は保ってないけど」と、勝手に頭髪の話だと捉えて返す、グレートマエカワであった。
グレートマエカワ
「いろんな、あのー、思いがありますからね、野音に。そういうのを味わいつつ、やりたいと思います」
「モンキー」と「ヒコーキ雲」の間の、最初のMCで、鈴木圭介はそう言った。そして、昔、雨の野音でやっていたように、本編で一回、アンコールで三回、ステージでヘッドスライディングを決めた。
以前、ARABAKI ROCK FEST.でヘッドスライディングしたら、ちゃんとケガしてしまい、それ以降控えていたのを、何年かぶりに解禁したそうだ。「ここはヘッドスライディングしなきゃ、と思った」と、終演後におっしゃっていました。今回は無事でした、身体。
本編のラストが「夜明け」、アンコールのシメが「サヨナラBABY」だったのも、この日のライブが特別なものであることの、象徴のように感じた。
どちらも、フラカンの中ではバラード寄りの曲である。前者は、フラカン一度目のメジャー後期の苦難の時代=1999年にリリースしたシングル。後者はフラカンのアンコールのラストの定番であり、2015年12月19日の日本武道館でも最後にプレイされたし、ここ日比谷野音で、その直前に亡くなった、かつてのボスに捧げられたこともある……という話は、フラカンの単行本やインタビューで何度もしているので、繰り返しませんが(未読の方は、 こちら(https://lp.p.pia.jp/article/news/232771/index.html?detail=true) をどうぞ。)
竹安堅一
アンコールは、二作前の『50×4』のラスト・チューン「見晴らしのいい場所」、「夢の列車」と同じくらい初期からやっている「プラスチックにしてくれ」、そして前述の「サヨナラBABY」の3曲。
「もうちょっとだけ 見晴らしのいい場所へ もうちょっとだけ 陽当たりのいい場所へ もうちょっとだけ 風の抜ける場所へ/サヨナラも涙も寂しさも乗せて また走り出す/サヨナラも後悔も虚しさも乗せて また走り出す」
という歌詞の「見晴らしのいい場所」は、「深夜高速」や「東京タワー」や「ハイエース」と同じくらい、「本当に自分のことしか歌えない」「その自分のことが、聴き手ひとりひとりのことになる(※「聴き手みんなのものになる」ではないところが重要)」、鈴木圭介ならではの才能が爆発している曲だなあ、と、この日聴きながら思った。というか、曲調がわりと「のんき寄り」なもんで、僕もそこを見落としがちだったことに、改めて気がついた。
ミスター小西
今後のフラワーカンパニーズは、怒髪天との2マンツアー(10月前半に4本)、大阪城音楽堂のイベント出演(10月22日(土))、地元名古屋での年イチイベント『DRAGON DELUXE』(10月29日(土) 名古屋ダイアモンドホール、w/ピーズ)等を経て、11月5日(土) 水戸ライトハウスから、『ネイキッド!』のリリース・ツアーに突入する。
全部で33本(33周年と掛けたんですね)、2023年4月30日(日) 四日市CHAOSまで続く、コロナ禍以降のフラカンにとって最大本数のツアーである。その最終日は、鈴木圭介が波平と同い歳になる当日である。
Text:兵庫慎司Photo:CHIYORI
ぴあアプリではフラワーカンパニーズのアプリ限定ライブ写真をご覧いただけます。ぴあアプリを ダウンロード(dpia-app://contentAll?contentId=26fd672c-5dd5-477b-b989-76ce8d72f9ff&contentTypeId=2) すると、この記事内に掲載されています。
<公演情報>
「フラワーカンパニーズ ワンマンライブ『ゾロ目だョ全員集合!〜フラカン33年、野音99年〜」