“家族”というかたちの来し方行く末を描く半ドキュメンタリー、ゆうめい『姿』再演
劇団ゆうめいの『姿』が5月18日(火)から東京芸術劇場シアターイーストで開幕する。2019年、三鷹市芸術文化センター星のホールにて上演された作品の再演となる。再演といえど、どうやら初演から現在に至るまでのできごとも新たに盛り込まれ、作品はさらに進化したものになるようだ。
ゆうめいの作品には、作・演出の池田亮をはじめとするメンバーが実際に経験したことが反映されている。これまでも、池田自身の学生時代のいじめの経験や、親との関係が舞台上で繰り広げられてきた。
そんな彼らの総決算的作品のひとつが『姿』だ。池田と両親の関係性を軸にしつつ、その両親の若い頃にさかのぼってふたりの出会いと歩みも描く。池田と、エリート公務員である母との関係はこれまでも何度かゆうめいの舞台で明かされてきた。
その様子が「姿」ではより丁寧に、詳しく描かれる。
そこにあるのは「他人の家族の話」にすぎない。けれども、そこには誰もが思い当たる人との関係の難しさが潜んでいる。仮に家族に問題を抱えていない人であっても(そんな人がいるのか疑問だが)、必ずどこかで見知った感情が、舞台の上にはあるはずだ。
今作のドキュメント性を増しているのは、役者として参加する池田の父、五島ケンノ介の存在だ。実の息子が書いた父の姿を、本人が演じるのだ。……と、ここまで「ドキュメンタリー」「家族の姿を描く」等綴っていると、社会派でシリアスな演劇だと思われてしまうかもしれない。けれどテンポよくリアリティのある、ありすぎる会話につい笑ってしまうシーンも多く、オープニングからVTuberが登場したりもするという演出面の面白さもふんだんに取り入れられている(池田はアニメやVTuberの作家としても活躍している)。
映画でよく「エンドロールが終わるまで席を立たないでください」という触れ込みがあるが、もしラストの演出が初演どおりであるならば、この作品もまた、最後まで席を立たないほうがいい。その理由はぜひ劇場で確かめてほしい。
文:釣木文恵
芸劇eyes参加作品
ゆうめい『姿』再演
作・演出:池田亮
出演:石倉来輝 / 黒澤多生 / 児玉磨利 / 五島ケンノ介 / 高野ゆらこ / 田中祐希 / 中村亮太 / 森山ふみ / 山中志歩 / 遊屋慎太郎
2021年5月18日(火)~2021年5月30日(日)
会場:東京芸術劇場シアターイースト
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