くらし情報『「喜劇は悲劇、悲劇は喜劇」ー演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』』

「喜劇は悲劇、悲劇は喜劇」ー演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』

『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』より 撮影:田中亜紀

撮影:田中亜紀



シェイクスピアは『マクベス』で「きれいは汚い、汚いはきれい」と語らせているが、モリエールの『守銭奴』はさしずめ「喜劇は悲劇、悲劇は喜劇」とでも例えようか。主人公の金満家アルパゴンは金に汚く、自分勝手なエゴイスト、傍迷惑な老人だ。言ってしまえば唾棄(だき)すべき人物だろう。だが、それを演じた佐々木蔵之介。終景で、愛すべき老人に変身させていた。


「喜劇は悲劇、悲劇は喜劇」ー演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』


初景の登場から笑ってしまった。開幕直後、下手から出たハゲ頭の佐々木は杖を突き、腰を曲げ、上手に歩み込んだ。何とも早い速度。たったそれだけの瞬間芸なのにクスクスときた。何者だ、この男は。何を考えているのだ、と思わせるのが巧い。

執事ヴァレール(加治将樹)を怒鳴り散らして命ずれば、息子クレアント(竹内將人)の失敗を毒づき、娘エリーズ(大西礼芳)には意に添わない結婚相手を押し付ける。憎味を効かせて、毒味も入っている台詞と演技。
しゃべりは早口で、いかにも肉食系の元気なハゲおやじに思える。

「喜劇は悲劇、悲劇は喜劇」ー演劇ジャーナリスト・大島幸久が観た『守銭奴 ザ・マネー・クレイジー』


やはり金持ちのアンセルムを演じた壌晴彦との腹の探り合い、騙し合いの芝居が、ともに押すところは押し、引くべきは引いて痛快。

大切な金を盗まれた場面から彼の本領発揮である。

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