原作へのリスペクトを込めて表現。明日海りお、梅田彩佳ら音楽劇『精霊の守り人』上演中
舞台装置は、紗幕に描かれた山地や異世界の光景が幻想的な美しさ。呪術や水の表現など布を使った演出も、舞台ではスタンダードなものだが、十二分に効果を発揮していた。なかでも秀逸なのは、静止画の風景の中で鳥だけが動きを見せ、鳴き声を聞かせていたこと。これが物語を表現する上で、ある種の要となっていたのではないだろうか。
そうした舞台を形作るすべての要素が、上橋菜穂子による原作『精霊の守り人』を忠実に、そしてリスペクトを込めて表現している。原作が好きで、あるいは多少なりとも興味があって訪れた観客にとって、こんなに嬉しいことはないだろう。
幅広い層に愛されている原作だからこそ、ファミリー向けのフェスティバル公演と一般をも対象とする特別公演の2パターン※で上演されることにも納得がいく。まさに日生劇場60周年記念作にふさわしいこの公演は、8月6日(日)まで。その後、地方公演あり。
※本公演は、舞台鑑賞が初めてとなる多くの子どもたちの心に永く残る作品を目指し、家族で楽しめる上演時間約2時間の「日生劇場ファミリーフェスティヴァル公演」として、日生劇場及び大阪、新潟、千葉、山口にて上演、また、各地の小学生を学校単位で無料招待するニッ セイ名作シリーズ公演(鑑賞教室公演)