あらゆる困難を鎮めるために演劇はある 『子午線の祀り』成河インタビュー【後編】
撮影:源賀津己
『子午線の祀り』は、こんなモノローグで始まる。
「晴れた夜空を見上げると、無数の星々をちりばめた真暗な天球が、あなたを中心に広々とドームのようにひろがっている。ドームのような天球の半径は無限に大きく、あなたに見えるどの星までの距離よりも天球の半径は大きい。
地球の中心から延びる一本の直線が、地表の一点に立って空を見上げるあなたの足の裏から頭へ突きぬけてどこまでもどこまでも延びて行き、無限のかなたで天球を貫く一点、天の頂き、天頂。」
天からの視線で人間たちを見つめようとする作者・木下順二の壮大な発想に、まず度肝を抜かれるのだが、成河さんは、なんといっても「あなた」という言葉の選択に、圧倒されるという。
俯瞰して見れば義経と知盛はどちらも敗者
――義経は知盛を追いつめて勝利はするものの、天頂の一点からそれを見下ろせば、勝者と敗者などという小さな話ではないのですね。
どちらも敗者ですよ。この時代は、お互いの顔を見たこともないし、噂でしか相手のことを知らないから、戦うにしても、私怨じゃないんですよね。もっと異なる次元の何かがぶつかり合うわけで、俯瞰してみることで、それが浮かび上がってくる。