ベルカントの華「狂乱の場」だけを集めた前代未聞のリサイタルに挑む佐藤美枝子
19世紀のベルカント・オペラの〈狂乱の場〉といえば、精神を錯乱したヒロインが、高音域の超絶技巧を駆使して歌う、オペラの華であり、大きな聴かせどころだ。この秋、ソプラノの佐藤美枝子が、4つの〈狂乱の場〉だけで構成するという前代未聞のリサイタル「狂乱KYO-RAN響蘭」を開く。
「以前からやりたいと思ってあたためていた企画です。1998年のチャイコフスキー国際コンクールでも《ルチア》の〈狂乱の場〉を歌って第1位をいただきましたし、ずっとベルカント唱法を勉強してきた人間としては、ベルカントの真髄が〈狂乱の場〉だと思っています。オペラ1本に相当するぐらいの内容が凝縮された場面が〈狂乱の場〉です」
プログラムはベッリーニの《清教徒》と《海賊》、ドニゼッティの《ランメルモールのルチア》と《アンナ・ボレーナ》の、4つの〈狂乱〉。いずれも主役が延々と一人で聴かせる各オペラの山場だ。まるでメイン・ディッシュ4品のコース料理のようなもので、声のスタミナは大丈夫なのかと考えてしまうが、それは大きな問題ではないのだそう。
「実際のオペラ上演でも、主役であれば、出ずっぱりで1時間半以上ずっと歌っているなんていうのは当たり前なんですね。