ベルカントの華「狂乱の場」だけを集めた前代未聞のリサイタルに挑む佐藤美枝子
今回はモノオペラ的なステージ構成での上演。岩田達宗が演出を手がける。
「私がいちばん共演回数が多い演出家が岩田さん。私の中で演出家といったら岩田達宗なんです。研ぎ澄まされた演出で、私のいちばんいいところを出していただけると信頼しています。今回も私の声という人体楽器をどのように〈狂乱の場〉として表現するかというところに焦点を当てて作ってくださると思います。
1995年に私が日本で初めてオペラに出演させていただいた時の演出助手が岩田さんで、毎日朝から晩まで、手の動かし方から、足の運びから、基礎からすべて教えていただきました。私は彼の弟子みたいなものなのです。
彼はなんでもできるので、このリサイタルのチラシのデザインも、『狂乱KYO-RAN響蘭』というタイトルも岩田さんのものです。チラシの中央にデザインされているのは十字架。岩田さんによれば、十字架は、登場人物たちを〈狂乱〉に追い込む張本人です。愛する男性、男の社会。その社会を作ったのが十字架。それが彼女たちの〈狂乱〉の原因であり背景である。と同時に、彼女たちは十字架に救われ、それを信じて生きています。
いっぽう、タイトルの『響蘭』の“響”が象徴するのはベルカント。