【ライブレポート】新しいロックを感じた、w.o.d.×SIX LOUNGEスプリットツアー『PEAKY BLINDERS』追加公演
Photo:TAKAHIRO TAKINAMI
「ツアー6カ所回って今日が最終日なんですけど、ファイナルじゃなくてエクストラみたいな。追加公演やのにようこんなに人来ましたね。最高です」、「ファイナルが打ち上げやったとしたら、今日は追加公演ということで二次会みたいなもの。二次会のほうが上がるじゃないですか」と、w.o.d.のサイトウタクヤ(Vo/Gt)は言った。
1月25日、w.o.d.とSIX LOUNGEのスプリットツアー『PEAKY BLINDERS』追加公演。さらにこの日は、東京都の都心には大きな影響が出なかったものの、大寒波のためニュース番組などでは外出自粛を呼び掛けていた日だった。それにもかかわらず、会場の渋谷クラブクアトロは超満員。ざっとフロアを見渡せば、圧倒的に10代~20代と思われる若い観客で埋め尽くされていた。
w.o.d.
「ロックは死んだ」論争に加わる気はないが、いわゆる“ロックらしいロック”を取り巻く環境が、一定のノスタルジーを孕んでいることは否めない。もちろん、それらが現在進行のポップミュージックに与える影響の大きさや、良質なサウンドを生み続けているアーティスト/バンドが多くいることを認識したうえでもだ。
w.o.d. サイトウタクヤ(Vo/Gt)
しかしこの日は、そんな筆者の考えが根っこから揺れる、新しい感覚がそこにあった。60年代~00年代あたりまでのガレージやオルタナティブロックの真ん中を貫きながらも、“ロックは死んだ”論も“昔は良かった”話も入る余地のない、両バンドのコントラストやシナジーによって導かれた、“あの頃”を知らない世代を中心としたフロアの圧倒的な勢い。そのダンスや拳の荒波から、そう遠くないうちにロックがまた新しいムーブメントになるかもしれないポテンシャルを感じる夜だった。
w.o.d. 中島元良(Ds)
w.o.d.とSIX LOUNGEは、同じ3ピースというプリミティブな初期衝動が起点になっているバンドではあるが、アウトプットのベクトルは異なっている。w.o.d.はロックンロールが多様化しサイケが生まれた時代や、ロックがハウスやブレイクビーツなどと交わってトレンドを塗り替えたマッドチェスター、昨今のUKポストパンク勢から受けた刺激など、進化的なロックのムーブメントに刺激を受けながら今を捉えるバンド。
w.o.d. Ken Mackay(Ba)
一方でSIX LOUNGEは、感情の乗ったメロディとてらいのないオールドスクールなサウンドを貫く一本気な姿勢を軸に、それでも無限の可能性を感じさせる楽曲のバリエーションや、ライブによって鍛え抜かれたオリジナルな展開力が持ち味と言えるだろう。
まず初めに登場したのはw.o.d.。前衛的なビートを圧倒的なパワーで鳴らし聴く者をねじ伏せる「失神」、ガレージロックの最新型と言える「イカロス」、スモーキーなフレーズが渋い色気を放つ「煙たい部屋」、90年代のUKロックを思わせるメロディアスな「オレンジ」、オーセンティックなビートを下敷きにしたw.o.d.流ロックンロールパレード「馬鹿と虎馬」、サイケデリックロックとダンスミュージックが結合した「モーニング・グローリー」など、実に多彩なセットリストとグルーヴはさすが。そんなパフォーマンスを思い思いに楽しむ観客の織り成すフロアは、ロックの持つ自由そのものだった。
SIX LOUNGE ヤマグチユウモリ(Vo/Gt)
そんなw.o.d.からのバトンを受け取ったSIX LOUNGE。ヤマグチユウモリ(Vo/Gt)は「今日はエクストラファイナルですから、どういうことかわかりやすよね。好きなバンドと6日間回って、最終日にこんだけの人が集まるだけでもじゅうぶんなんですけど、もっともっとすげえとこまでいって、何も残さんで帰りましょう」と言った通り、ここまでの熱をさらに上書きし、天井知らずの盛り上がりを巻き起こす。
SIX LOUNGE
無数の拳やジャンプのたびに前がかりになるフロアに照明が当たった瞬間は、ロックのみが成し得る絶景。そこに宿るエネルギーは、アンコールでw.o.d.とともに演奏する予定だったw.o.d.の曲「1994」をヤマグチが「テンション上がったんでやっちゃいます」と言って、思わず披露したほどだった。
SIX LOUNGE イワオリク(Ba/Cho)
SIX LOUNGE ナガマツシンタロウ(Ds/Cho)
最終的にアンコールでは、6人がステージに集まってウイスキーのショットを交わし、もう一度w.o.d.の「1994」をヤマグチが歌い(w.o.d.も「1994」を演奏しているので3回目)、SIX LOUNGEの「ピアシング」ではw.o.d.の中島元良(Ds)がマイクを取った(w.o.d.が本編でカバーしているので3回目)。そうして個性の異なる2バンドのシナジーは、メロディアスなファストチューンという互いの共通項をクロスオーバーさせることでひっちゃかめっちゃかになり、まさにヤマグチの宣言通り、演者もフロアも燃え尽きた。
終演後少しサイトウと話す時間があった。「もうめちゃくちゃでしたね。最高です。やってよかった。僕ら音楽的にはそんなに古いことしてるつもりはないんですけど、演奏スタイルは言わば昔ながらじゃないですか。そんなロックが、一昔前のものじゃなくて今のものとして鳴っていた気がするんですけど……」、彼はそう言った。
私も前述したように同感。演者も観客も含めて、“こんな時代にロックが好きな人たち”という印象はない。
今再びロックの中のロックがきている。筆者はこの現象の理由にまで辿り着けておらず、これからどのくらい広がっていくのかもまだ予想できないが、引き続き追いかけ盛り立てていく意味のある流れであることは間違いない。
Text:岩見泰志Photo:TAKAHIRO TAKINAMI
<公演情報>
w.o.d.×SIX LOUNGE『PEAKY BLINDERS』追加公演
1月25日(水) 東京・渋谷クラブクアトロ